2018.09.16
# 人工知能

哲学者がAI失業論を喝破「AIではなく経営者が雇用を奪う」

多くの人が誤解していること
岡本 裕一朗 プロフィール

『モダンタイムズ』の再来

基本的な場面に戻って考えてみましょう。

そもそも人間と人工知能は対立するのでしょうか。具体的に言えば、人間だけの職場、あるいは人工知能だけの職場が考えられるのでしょうか。

たとえば、コンピュータが登場したころを思い出してください。当初は、人間の仕事だったものを、コンピュータが肩代わりするので、人間の仕事は軽減されるだろう、と言われたものです。

ところが、現実はどうだったでしょうか。

 

コンピュータの導入によって、今までなかったさまざまな業務が一気に増えることになりました。コンピュータに適した入力作業が必要になり、インフラも整備しなくてはならず、また補修や点検も必要になります。

もともと歴史的に見ても、人間はずっと道具を使って生活してきた、と言えます。とくに産業革命以後になると、機械と人間は常に共同作業(コラボ)をしてきました。

その点では、人工知能が導入されても、このコラボが消滅するわけではありません。むしろ、その関係の仕方が変わるのでしょう。

問題は、どのような関係を取り結ぶかであって、「人間か人工知能か」という二者択一ではないのです。

〔PHOTO〕iStock

人間と人工知能が共同作業せざるをえない一つの理由は、ソフトに比べて、ハードの側面が十分発達していない点にあります。

わかりやすい例で、お掃除ロボットを考えてみましょう。

掃除の過程で障害物に引っかかって、ロボットが身動きできなくなったとします。このとき、人間が障害物を取り除いて、再び掃除をさせることになります。

ロボットは障害物を認識したとしても、人間のように手足を自由に使って簡単に乗り越えることができないからです。

このように考えると、人間は今後、人工知能の身体、あるいは手足のようになって、人工知能が命ずるものを実行したり、人工知能がよく作動するように補助したりする役目を担うのではないでしょうか。

これは、「人工知能の下働き」になる、と表現できるかもしれません。

しかし、もう一度強調すれば、人工知能の下働きをするといっても、何も今初めて起こったことではありません。

機械を使って仕事をしていたとき、その機械がうまく作動するように、人間は働いていたわけです。チャップリンの映画『モダンタイムズ』には、そのあたりが描かれています。

こうして見ると、人工知能の導入によって、人間の歴史上、特別なことが起こるわけではなく、具体的な職種や従事する比率が変わるに過ぎないことがわかります。

その意味では、とくに不安視する必要はないともいえるでしょう。もちろん、どれに属するかは、個人的には大問題ではありますが。

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