なぜ逃げない? 災害大国の日本が陥りやすい「正常性バイアス」問題

インフラ未発達でもキューバは死者ゼロ
木原 洋美 プロフィール

「避難したくなる」がなにより重要

一方東京都も、「避難したくなる避難所」をめざし、充実化をはかっていきたいと森永氏はいう。

「『避難したくなる避難所』は必要ですね。以前は、首都直下型地震のような災害が起きた時には、一刻も早く帰宅できるように支援するのが都の方針でした。

しかし、東日本大震災時の大混乱と帰宅難民問題を教訓にして、『3日間は帰宅せず、都内に待機してもらう』方向に、対策を大転換しています。それに伴い、避難所の快適性にも力を入れているので、しっかりと広報したい。

ポイントは、充分な水の確保と、正確で迅速な情報発信機能を持つことです。災害で不安な時、人が一番に求めるのは、水と正確で迅速な情報だからです。避難所に行けば、両方必ず手に入るというふうにしたい」

ちなみにキューバの避難所は、「災害時も平時と変わらない、あるいはそれ以上の医療を提供すること」を基本に、医師や看護師、医療品などを充実させているという。

 

DMAT(災害医療派遣チーム)に登録し、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本大地震等で救援に当たってきた、ある救急医は次のように嘆く。

この20年、日本の災害医療は進歩しているように言われていますが、避難所についてはほとんど変わっていません。暖房も冷房も無い体育館で、床に段ボールを敷き、プライベートもなにもない状況で長期間の避難所生活を余儀なくされる。あれでは、健康な人も病気になるし、災害関連死もなくせません」

本気で、自然災害から人命を守りたいなら、「正常性バイアス」という、人間の特性を変える努力をするよりも、避難所を「避難したくなる場所」にする工夫をこらすほうが確実で、即効性がある。

大規模な自然災害は、起きるのがあたりまえだが、そのたびに、急ごしらえの避難所で、不安で不自由な日々を過ごすのは、決してあたりまえではない。

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