実録・私大医学部入試で横行する「多浪生差別」その驚くべき内実

異様に厳しい面接を実況中継
小林 公夫 プロフィール

「なぜ、4浪も?」

別室に入り、着席するや否や、いきなり「なぜ4浪もしてしまったのか」とストレートパンチが飛んできた。本人の受験記に詳細に記されたデータを元に、そこで問われた質問と教え子の回答を実況中継風に少し記してみよう。

Q. なぜ、4浪もしてしまったのか?

A. 浪人3年目までは大手予備校に在籍していた。その間は努力はしていたものの、友人との情報交換を密にせずに勉強法がやや独りよがりになってしまった。そのため、成績が伸び悩み長く時間がかかってしまった。4年目は予備校を少人数のところに変えた。そこでは、親密な仲間が増えるとともに自らを反省する機会も増え、成績も伸びた。仲間たちと切磋琢磨することの大切さと共に、自らを客観視することの重要性を学んだ。

Q. ということは、君は大人数より少人数の予備校のほうが合っていたということになるが、大学はどちらかというと大人数の予備校に近い。君はそれでもやっていけるのか?

A. やっていける自信がある。少人数とはいえ80人規模の予備校だった。私はそこでの生活を通じ仲間の大切さを実感したので、入学後は積極的に他者との交流を深めていきたいと考えている。また、仲間の影響で集団が悪い方向に流されてしまうこともあるが、そのような時は誰かが声をあげれば全体が良い方向に軌道修正されると思う。

Q. では、医師に必要な要素として哲学、技術、知識、コミュニケーション能力があるが、これらに順位をつけなさい。

A. 上からコミュニケーション能力、哲学、技術、知識です。

 

Q. 知識が一番下にあるが、知識がない医者は許されるのか?

A. 知識がいらないというわけではなく、知識を備えていることは医師としての必要十分な条件だと思い、知識を一番下にした。多くの知識を得るために勉強を続けることは医師として当然のことで、その上でコミュニケーション能力などを磨いていくことが大切なのではないかと考えている。

Q. 質問を変える。技術は優れており手術の失敗率が5%だが、患者とあまりコミュニケーションを取らない医師がいるとする。一方、患者とのコミュニケーションをよく取るが手術の失敗率が10%の医師がいるとする。さて、どちらがいい?

A. 後者だと考える。ミスをしない人間はおらず、ミスを防ぐには周りの人達の協力が必要である。そして、万が一何か失敗した時、それが些細なミスでも無愛想な医師の場合、患者はより嫌な思いをするだろう。さらにその状況は訴訟のリスクにもつながる。私の祖父が前立腺がんで入院した時、主治医の方がとても丁寧で思いやりのある人だった。祖父は結局亡くなってしまったが、主治医があの先生でよかったと今でも思う。感謝の気持ちもある。

Q.現在、再生医療が進んでいるが、これを生殖技術に応用することに対してどう考えるか?

A. 不妊治療などで大いに役立つし助かる人も多いと思うが、未来への影響は計り知れない。従って、見切り発車でやらずに慎重になるべきだと思う。なぜなら現在の命も未来の命も等しく大切だからだ。軽率に行動し、取り返しのつかない事態になることは避けるべきだ。ただし、この技術には利益もあるし、医学は発展せねばならない。結論として、慎重に研究は進められるべきだと思う。