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実録・私大医学部入試で横行する「多浪生差別」その驚くべき内実

異様に厳しい面接を実況中継

東京医科大学における「女性受験生の得点調整問題」が、医学部受験生にもたらした衝撃はいまだ収まらない。だが医学と生命倫理の研究の傍ら、長年医学部受験生を指導してきた小林公夫氏は、「女性だけでなく、いわゆる『多浪生』が私大医学部に合格するのも、極めて難しい」ということに気づいていた。受験生が明かした、「多浪差別」の実態とはーー。

「何かある」とは感じていたが

今年の6月の話である。医学概論を集団で指導している医学部受験生70名ほどの医学部志望書などを、個別にひとりずつチェックする機会があった。

その場では受験生から、プライベートなものを含め様々な相談が持ちかけられる。今春受験した医学部と来春受験予定の医学部について、自分にはどこが相応しいかとの質問も出てくる。

その中に、「ダヴィンチ(内視鏡下手術支援ロボット)など先進医療に興味があり、東京医科大学を受験したいのだが、どう思うか」という質問があった。確か70人中10人程の教え子からその種の質問がでてきたのを記憶している。しかしながら、それに対する私の返事は消極的だった。色よいものではなかった。

これは長年の経験から無意識のうちにそう察知したのだろう。殊に、この5年ぐらいの動向を見ると、東京医科大学は教え子がなかなか合格しない大学というイメージが私の中に形成されていたからだ。

実際、戦績はよくなかった。私が指導している受験生からは、毎年20人前後が受験し、5人ほどが1次試験を通過するも、補欠合格も含めて、最終合格するのは1人から2人というありさまだった。

 

1次試験合格者をつぶさに観察すると、共通の特性があるように思われた。サンプル数が少ないため確かな帰納とは言えないが、

●現役もしくは1浪の男子で極めて学力が高い者

●女子受験生の場合、理科(殊に生物)と数学が極端に得意な者

という属性があるように思われたのである。このフィルターを通過するのはなかなか難しかろう。結果として、補欠合格者も含め、最終合格するのは他の私立医学部と比較すると難度の高さが感じられた。

ちなみに、過去5年間の最終合格者をチェックすると、東京医科大学に進学する者は稀少だった。皮肉なことに、同時に国公立大学医学部に合格し、そちらに進学してしまうような優秀な学生が多かったのである。この現象は謎であった。

その後、件の報道に触れて、合点がいった。何かがある、と薄々は感じていたものの、得点調整というメカニズムによる取捨選択を行っていたとは予想だにしなかった。

しかし、ここまで極端ではないにしろ、過去から常態化している医学部入試の選抜システムは何も、東京医科大学に限ったものではないように思われる。

文科省の調査で明らかになったこと

先日9月5日(水)の新聞報道で、全国81の国公私立大学の男女の合格率が発表され、波紋が投げかけられた(https://digital.asahi.com/articles/ASL9352HHL93UTIL01B.html)。

しかしながら、報道には現れないもう1つの重要な問題がここには潜んでいるように思われる。それは女子受験生差別の問題ではなく、「多浪生差別」の問題である。

その日、たまたま講義のため、予備校に出講することとなった私は受験生から多くの答えにくい質問を受けた。模試の成績が良い優秀な再受験生(男子)からは、開口一番、次のように問われたのである。

「僕は年齢的には4浪以上になる。文科省の調査によると多浪には厳しい結果のようだが、一体どこの医学部を受験すれば良いのだろう。僕が受けられる大学は本当にあるのだろうか」

私は言葉に詰まった。頭を抱えこんでしまった。