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日本人が知らない「食べ物ルール」
岡田 千尋 プロフィール

畜産物の調達基準の仕組み

畜産物の調達基準は、以前からある”Global G.A.P.”という国際的な認証と、”JGAP”という2017年に慌てて作られた新しい認証と、これらの認証をとるのが難しい農家のための”GAP取得チャレンジシステム”という農家が自己点検を行う仕組みの3つが用意されている。

1つ目のGLOBALG.A.P.の畜産物基準は日本語訳すら公開されていない。GLOBAL G.A.P.のアニマルウェルフェアは少ないが、それでもJGAPよりは良い。

2つ目のJGAPのアニマルウェルフェアの項目は実は2項目しかない。

「AW飼養管理指針のチェックリストを活用して、飼養環境の改善に取り組んでいる」こと。

つまり、チェックリストがすべて「はい」であることは求めておらず、チェックリストを見ながら改善に取り組んでいればよしとするものであり、認証の意味をなしているような気がしない。

またAW飼養管理指針のチェックリスト自体のレベルは低く、さらにあやふやに定義されており、捉え方次第でだれしもが「はい」にチェックできそうな項目ばかりが並ぶ。

たとえば、「鶏に不要なストレスを与えたり、鶏がけがを負うような手荒な取扱いをせず、日頃から丁寧に接していますか」「鶏の快適性を維持するため、可能な限り、暑熱対策や寒冷対策を行っていますか」などだ。

もう1つは「家畜の輸送に当たっては、アニマルウェルフェアに配慮するとともに、家畜の衛生管理ならびに安全の保持および家畜による事故の防止に努めている」というもので、具体的な規定はなく、例えばこんな状態でもOKかもしれない。

3つ目のGAP取得チャレンジシステムも、AW飼養管理指針の自己チェックを求めているだけで最も簡易なものだ。

 

よい取り組みすらも潰すかもしれない

なにもないよりは、たしかにマシだ。

いまJGAP認証を取得している農場や、GAP取得チャレンジシステムの取り組み農場は、日本国内では意識が高いほうの農場だろう。

ケージフリーへの移行に取り組んでいる養鶏場も、ストールフリーの養豚場も数件だけだがみられる。それらの農場はもしかしたらグローバルレベルに達している可能性もある。

でも、日本流アニマルウェルフェアの枠組みの中にいたら、良い評価を得ることは難しいだろう。世界から見た日本のアニマルウェルフェアの評価は、このままだと明らかに悪いものになるためだ。

せっかくのオリンピックという機会は、日本にとってマイナスに働くかもしれない。

低いレベルの農家に合わせたオリンピックではなく、高いレベルの農家を評価できる調達基準であるべきではなかったのか。

東京大会時における日本食・食文化の発信を目指す日本政府と東京都、日本食はたしかに美味しいけれど、素材は日本から入れないほうがいいとならないよう、卵のケージフリーと豚肉の妊娠ストールフリーくらいはクリアしたほうがいいのではないか。

食べ物は大会直前に調達するのだから、バトンを拾うチャンスはまだある。

(注)種付け後4週間までと分娩前1週間を除く
*1 Martinez-Miro, S., Tecles, F., Ramon, M., Escribano, D., Hernandez, F., et al. (2016). Causes, consequences and biomarkers of stress in swine: an update. BMC Veterinary Research, 12: 171.
*2 Becker, D.E. (2013). Basic and clinical pharmacology of glucocorticosteroids. Anesthesia Progress, 60(1): 25-32.
*3 Crawford, B.A., Liu, P.Y., Kean, M.T., Bleasel, J.F. & Handelsman, D.J. (2003). Randomized placebo-controlled trial of androgen effects on muscle and bone in men requiring long-term systemic glucocorticoid treatment. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 88(7): 3167-3176.
*4 Moghadam-Kia, S. & Werth, V.P. (2010). Prevention and treatment of systemic glucocorticoid side effects. International Journal of Dermatology, 49(3): 239-248.
*5 Klein, N.C., Go, H.C. & Cunha, B.A. (2001). Infections associated with steroid use. Infectious Disease Clinics of North America, 15(2): 423-432.
*6 Council Directive 1999/74/EC of 19 July 1999 laying down minimum standards for the protection of laying hens. Official Journal L203, 03.08.1999 p. 0053‐0057.