なぜ世界のメダリストたちは東京五輪に「強烈抗議」したのか

日本人が知らない「食べ物ルール」
岡田 千尋 プロフィール

日本流アニマルウェルフェア

私たち日本人にとって、アニマルウェルフェアはまだまだ馴染みがなく、新しい考え方のように感じる人が多いかもしれない。

だから農林水産省が提示したレベルのアニマルウェルフェアにころっと騙され、東京大会組織委員会も、今回の調達基準に「アニマルウェルフェアという言葉が入ったことが画期的」、などと述べる。

アニマルウェルフェアは科学的根拠を持って定義されているものであり、例えば鶏には1羽当り15cm以上の止まり木が必要である*6など、具体的にしていかなければあまり意味がない。

難しいことのように聞こえるが、アニマルウェルフェアとは動物自身の生態と欲求を利用し、免疫力や社会性や能力を活かして農業をするものであり、人にも動物にもメリットがある。

 

ただし、狭いケージや拘束飼育して動物の動きを封じるような飼育環境では、そのメリットは一切享受できない。

しかし、東京大会の調達基準になっている「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」(以下AW飼養管理指針)には、わざわざ「最新の施設や設備の導入を生産者に求めるのではなく」と、ケージでもストールでもいいから安心してねと書いてある。

業者を守るためだと思われるが、これではアニマルウェルフェアの正しい理解は一向に広まらない。

〔PHOTO〕gettyimages

オリンピック選手たちの声明にはこう書かれている。

「東京には、世界中から最高の体験を求めて、たくさんの人がやってきます。東京オリンピック・パラリンピックが食材の方針を改めず、世界が受け入れるクオリティに達することができないなら、畜産動物の福祉の向上を目指している世界から東京が遅れをとっていると見られるでしょう」

声明には国内外の54団体が賛同している。

東京大会のアニマルウェルフェアが見せかけであることに、世界は気がつきはじめている。

2024年のオリンピックはパリ、2028年はロサンゼルスだ。当然放牧の卵、妊娠ストールフリーの豚肉が使われるだろう。

両地域ともに、もっと高いレベルを目指すことができる。時が経てば経つほど、日本の基準の低レベルさが際立ってくる。

東京大会は残念ながら”負の遺産(レガシー)”を残すことになるだろう。