なぜ世界のメダリストたちは東京五輪に「強烈抗議」したのか

日本人が知らない「食べ物ルール」
岡田 千尋 プロフィール

ケージとストールの問題

羽も広げられず、羽毛が禿げて、月に一度殺虫剤でびしょ濡れにされ、運動もできず、骨がもろくなって骨折しまくるケージ飼育では、鶏たちは健康を保つことはできない。

体の大きさとぴったりの大きさのストールで拘束され、横を向くことすらできず、前に一歩後ろに一歩しか動けず、目の前の鉄棒をかみ続け、口を動かし続けるという異常行動を起こし、無気力・無反応がはびこる環境では、豚たちは骨と筋肉の強度低下、循環器系の健康阻害、脚の病気が誘発され、健康を保つことはできない。

また、声明を発表したオリンピック選手たちは、ストレスのある飼育から得た食べ物は、競技の結果にも結びつく可能性があると主張する。

ストレスを受けた動物の肉は、グルココルチコイドなどのホルモン量が高くなる*1。グルココルチコイドは経口摂取され*2、筋肉と骨密度、テストステロン*3*4、免疫力の減退*5につながり、血糖値、心臓血管機能にも影響する上、説明できない精神状態の変動との関連もある *4。

これらは、競技を目前にしたトップアスリートにとっては当然ながら注意すべき要素になりうる。

 

ケージフリーとストールフリーの流れ

実は私が代表理事を務めるアニマルライツセンターの要望はもう少し範囲が広く、と畜場での扱いにまで言及しているが、今回の声明がこの2点に絞られているのは、世界中の企業が卵のケージフリーと母豚の妊娠ストールフリーを宣言している最中だからだ。

ケージフリー宣言をする企業はもはや数え切れないほどであり、南米や東南アジア、アフリカにも広がっている。

妊娠ストールの場合はさらに、中国の大手食肉企業もが切り替えをグイグイ進めているところである。経済効率が落ちないこともあり、変えやすいようだ。

今から2年後にはさらに広がり、当然のものになっていることだろう。

そんなさなかに開かれる東京大会がこの基準をクリアしていないなんて、驚くほかない。

すでに10ヵ国でケージフリーの卵が流通するすべての卵の半分を超えており、EUと米国10州が妊娠ストール飼育を禁止しており、これらの国では日本人が遺伝子組換えの豆を使った味噌を避けるのと同じように、毎日の買い物でケージ飼育の卵を避け、ストール飼育の豚肉を避け、放牧の卵や肉を選ぶ。

当たり前の選択肢が日本にはないとなったら、選手だけでなく観光客はどう感じるのだろう。