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なぜ世界のメダリストたちは東京五輪に「強烈抗議」したのか

日本人が知らない「食べ物ルール」

ロンドンオリンピック銀メダリストのドッチィー・バウシュ氏(米国サイクリングチーム)と、平昌オリンピック金メダリストら計9名のオリンピック選手が、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下東京大会)で使用される卵や肉など畜産物のアニマルウェルフェア基準が低レベルすぎると抗議し、声明を発表した。

9名のオリンピック選手たちは、鶏をケージに閉じ込めない平飼い卵か放牧卵=ケージフリー卵にし、豚肉は妊娠ストールという母豚を拘束飼育しない農場の豚肉=妊娠ストールフリーの豚肉を使うことを求めている。

この2つの要望は、畜産動物の扱いを測る上で象徴的なものである。そのため、今回オリンピック選手たちは、最低基準として改善を求めているのだ。

ドッティー・バウシュ選手

オリンピック・パラリンピック「食べ物のルール」

オリンピック・パラリンピック(以下オリンピック)には、選手村や会場で出される肉、卵、魚や野菜などの食材の「調達基準」があること自体を知らない人も多いだろう。

オリンピックのように大きく世界的な影響力が大きい大会は、社会的責任が求められる。ロンドン大会以降、その核となるテーマは”持続可能性”だ。IOC自身も持続可能な大会を目指している。

メダルの素材だけでなく、選手村や会場の食堂で出される食事の素材についても、持続可能性に配慮した調達が求められる。

とくに大会に参加する10,500人の選手にとっては、普段自分たちが食べているものよりも質の悪い食べ物を食べることは避けたいだろうし、しかも、これまでの大会からレベルが下がることを知ればなおさら残念だと感じるに違いない。

 

ロンドンは放牧、リオはケージフリー、東京はケージ

これまでの大会の基準をみてみよう。

卵:ロンドン大会では屋内外を自由に出られる放牧卵以上とされ、ケージ飼育された鶏の卵は使用禁止、屋外には出られない平飼い卵も使ってはならなかった。

リオ大会では、ケージフリーでなくてはならないとされ、放牧か平飼いの卵、さらには地鶏が産んだもので、有機の餌を与えて育てたものでなければならないとされた。

東京大会は、飼育環境に関する基準はないし、地鶏という規定もない。

豚肉:ロンドン大会では、妊娠ストール飼育が禁止されていた(注)。そもそも英国ではすでに妊娠ストールは法的に禁止された飼育方法であったし、大会の翌年1月にはEU全体で禁止されるものであったため、当然の基準であった。

リオ大会では、公式な調達基準はなかったが、世界第1位の食肉加工会社であるブラジル企業JBSやマクドナルドを展開する企業が大会の行われる2016年までに廃止するなど、民間での努力が著しかった。

東京大会は、飼育環境に関する基準はないし、今のところ、妊娠ストールフリーを宣言する大手企業はない。

過去2大会からのアニマルウェルフェアというバトンを落としてしまったといった状況だ。