米中露「国益ファースト」の時代に、改めて問うべき「日本の国益」

進むべき道は「日米同盟+α」にあり
小原 雅博 プロフィール

日本の国益を脅かす「3つの脅威」

2013年、安倍政権は日本初の「国家安全保障戦略」を策定し、その中で、①日本の平和と安全、②日本の繁栄、➂リベラル国際秩序の擁護を日本の国益として位置付けた。戦後、日本政府が国家の重要な政策において日本の国益を規定したのはこれが初めてであった。

 

こうした日本の国益を脅かす問題として、第4章で、3つの脅威を取り上げた。

①国家・国民の平和と安全という死活的国益に関わる北朝鮮の核・ミサイルの問題

②国家の主権や領土・領海に関わる尖閣諸島を含む東シナ海の問題

③法の支配という国際秩序の擁護に関わる南シナ海の問題

こうした問題の本質に迫り、日本としてどう対処するのか、どう国益を守るのか、そのための戦略や政策を論じた。
 
戦後の日本外交の基軸は一貫して日米同盟であり続けてきた。そして、国際情勢が大きく変化し、「アメリカ第一」がリベラル秩序と同盟関係を揺るがす今日も、日米同盟の先に何かを見つけようとの動きは見られない。アメリカの「正常化」を待つ日本。

しかし、トランプ政治が問題の現れであって、原因でない以上、第二、第三のトランプが現れる可能性もある。それは、日米同盟だけで日本の国益を守れるのかとの疑問を生む。

「日米同盟+α」戦略を構想し、推進する時である。そして、そのαが中国を意識したものとなることは明らかだ。日中関係の新たな均衡点を見出す努力が不可欠である。

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日本としては、中国経済のダイナミズムを取り込みつつ、中国の影響力が強まる地域秩序が自由で開かれた法の支配に基づくものとなるよう、TPP11に加え、「一帯一路」やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の中においても役割を果たしていくべきである。

同時に、ネット世論や軍や共産党宣伝部による対日強硬の声が中国政治を壟断しないよう、首脳同士の信頼関係の構築を始め、あらゆる分野でヒトの交流を大幅に拡充する必要がある。

14億の中国人の対日理解の増進につながるパブリック・ディプロマシーの強化も必要だ。訪日観光の促進はその種の副次的効果が大であり、単なる数字目標の達成ではなく、受け入れ態勢を含めた戦略的対応が求められる。

リベラルな国際秩序が「力の論理」や過激なナショナリズムによって動揺する中で、リベラリストの声は日本でも世界でも弱まりつつある。そんな時代を迎えているからこそ、他国や国際社会の利益との調整を通じた国益の追求という「開かれた国益」が日本外交の思想的基盤であってほしいと思う。そのことを最終章で論じた。