米中露「国益ファースト」の時代に、改めて問うべき「日本の国益」

進むべき道は「日米同盟+α」にあり
小原 雅博 プロフィール

米中関係が日本の国益を大きく揺るがす

第3章では、日本の国益に重大な影響を与える米中大国関係を取り上げて、その行方を展望した。

国益が明確でなければ、戦略は一貫性を欠き、危機に際して果断に主体的・戦略的な対応を取ることはできず、国家は危殆に瀕する。まさに国益を誤れば国家は衰え、滅びる。戦前の日本がそうであった。

 

戦後の日本は、偏狭な国益追求を排し、アメリカの造り上げたリベラルな国際秩序の下で、国際協調外交に努めた。この間、国益が論じられることはなかった。平和と繁栄は日米同盟と自由貿易体制という枠組みによって維持されてきた。

しかし、その枠組みはトランプ大統領の「アメリカ第一」によって怪しくなってきた。強国・強軍という「中国の夢」の実現を目指す習近平国家主席は「一帯一路」に象徴される大国外交を展開する。

中国「一帯一路」の展開(『日本の国益』第3章より)

中国台頭は続き、パワー・バランスも変化する。台頭国家の国益やパワーが既存の規範や秩序を脅かし、権力政治というリアリズムが幅を利かす。そんな流れが欧米諸国の民主主義の不振・減退によって勢いを増している。

流動化し、液状化し、無秩序化する世界はどこに向かうのか?

その答えは、戦後世界を60年以上にわたってリードしてきたアメリカと、世界の頂点を目指す中国の行方と両国の関係にかかっている。

中国はアメリカを追い越すのか? 米中両大国は「トゥキディデスの罠」を回避できるのか?

トランプ政権は、中国を「アメリカの国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力」と明言した。米中両大国が国益のみならず、価値観をめぐって闘争する「新冷戦」に突入したかのようだ。ハイテク覇権をめぐる貿易戦争はその例だ。

アジアの中小国は、台頭する超大国候補と疲弊した超大国の狭間で経済利益と安全保障リスクのジレンマに揺れる。

ある国は中国の唱える「平和的発展」を疑問視しつつも、中国との経済関係の発展に期待を寄せる。また、ある国はアメリカの軍事プレゼンスを願いつつも、その行方に不安を覚える。中国はそんな諸国への外交攻勢を強める。

アメリカ優位が崩れつつある中で、「勝ち馬」中国に乗り換える国が出てきても不思議ではない。「China Pivot (中国旋回)」したフィリピンのドゥテルテ大統領は「ロシアか中国が新秩序創設を決めるなら、私はそれに一番に参加する」と公言した。東アジアは中国との合従連衡やバンドワゴンの時代に突入した。