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LINE Payの知られざる野望「メガバンク化構想」の全貌

覇権争いを制して、その先の世界へ
田中 道昭 プロフィール

我々がECサイトを一日のうちに眺めている時間は、買い物をする用事があるときくらい。一方でLINEを使っている人は、友達や職場の同僚から連絡があるたびに、あるいはこちらから連絡を取りたいときもLINEアプリを開く。日常的に閲覧しているのは圧倒的にLINEのようなコミュニケーションアプリだ。

なにしろ毎日、頻繁に閲覧しているのだから、初めての人でも決済サービスを利用しようとする抵抗感も和らげられる。さらにその手軽さがLINEは群を抜いている。

LINEアプリの中にウォレット機能が付いており、そこでQRコード決済ができるので、他のサービスのようにわざわざアプリをインストールする手間がかからない。いつも使っているLINEアプリに、銀行口座やクレジットカードの必要情報を入力して、紐づければチャージも簡単にできてしまう。

 

LINEが、経済の「インフラ」になる可能性

送金も実に簡単だ。送金手数料がかからないことも大きいが、LINEの場合、このことがさらに新たなユーザーを獲得する可能性を高めている。

重要なのはこの送金サービスが、取引だけではなく、コミュニケーションツールとしてその実力を発揮していることである。

たとえば、おじいちゃんとおばあちゃんがLINEを使えば、孫にお小遣いを送るのがずっと楽になる。「お小遣いがもらえるのなら」と、孫はスマホを使い慣れていない祖父母に、アプリをインストールしてあげて、熱心に使い方を教えるだろう。祖父母は孫とチャットで会話を楽しみ、そのお礼にお小遣いをあげる。お年玉もLINE Payでという時代も目前となるだろう。

中国でもウィーチャットペイを使って友達同士の会話に「いいね」の共感を示す意味で、トークンを贈ったり、交換したりしている。何かのお礼や結婚式のお祝いや葬儀でのご香典をメッセージをつけて、LINEで送るということにもつながっていくだろう。

「割り勘」機能もその一つだが、この個人間の送金機能こそが、LINEの強みである。

さらに見逃せないのは、LINE自体が社会インフラとしてなくてはならない存在となりつつあることだ。

文京区とNPOが民間企業の支援を受けて始めた「こども宅食」でも、LINEを活用して成果を出している。子どもの貧困撲滅を目的に、「こども食堂」をより発展させた支援で、貧困にさらされている家庭が匿名性をもって支援を受けられる仕組みが「こども宅食」だ。ネットニュースサイトのビジネスインサイダーの報道によれば、文京区がこの公募にラインを活用して対象の1000世帯に案内したところ、従来なら1割程度の応募率にとどまるところが5割近くの応募を得たという。

こうしたコミュニケーションツールとしてのLINEを行政の効率化につなげようというのが神奈川県や鎌倉市だ。LINEと包括連携協定を結び、LINE Payを使った税金や公共施設のキャッシュレス化をめざしている。こうした公共性でLINEは他社を圧倒しているのである。

お金が、そもそもコミュニケーションツールの一つであることを考えれば、人と人の関係を親密にさせる作用を持ち、さらにコミュニティを広げる作用があるのは当然のこともかもしれない。そのコミュニケーションの中心にある高度な通信手段のLINEが決済機能を持てば、それが人々の経済活動の中心に位置づけられるのは自然な流れなのだ。