皇室を30年以上側で見続けてきた名物記者が知る「陛下のお心」

「心」を推し測る30年だった
岩井 克己

生々しい真相はまだ書けない

―著書の『皇室の風』では、皇太子と雅子さまに対してやや厳しい論調になっているようにも読めました。

家庭問題で重いハンデを抱え、機能不全が続いてきたのは事実です。ネットなどで垣間見える国民の視線も厳しいものがあり、その点は非常にお気の毒ですし、心配です。だから率直に厳しいことも書いてきました。

世代が替われば、天皇観も変わり、国民の誰もがなるほどと納得できるような体制は、すぐにはできない。そこには摩擦も生じます。今の両陛下にも、危機感があるのではないでしょうか。両陛下は、自分たちの代ではできるだけのベストを尽くしたので、その後は次の世代に託すしかないと考えておられるように思います。

 

―両陛下や皇太子ご夫妻の海外訪問にも同行取材をしておられます。本書でその一端も描かれますが、皇室が外交で果たす役割は大きいですね。

「ソフトパワー」という意味では最強でしょう。大使100人分の働きともいわれますが、いつまでもそれに寄りかかる日本外交と政治の貧しさも感じてきました。戦後70年以上が経過しても、戦争責任について「それをいまだに主張する相手が悪い」といわんばかりの居直りの言説が絶えないでいる。

そうしたなかで、両陛下の海外訪問が融和や和解の観点でクローズアップされたのは大きかったと思います。一歩間違えれば、政治利用につながりますので警戒もしないといけませんが、市民レベルの和解の象徴的な役割を果たしてこられた。

―岩井さんは礼宮さま(現・秋篠宮さま)の婚約をスクープし、紀宮さまの婚約報道では新聞協会賞も受賞。そのスクープの舞台裏も明かされ、手に汗握る展開は、本書の見どころの一つですね。

私は「記者は客観報道の鬼」と思いながら記事を書いてきたつもりです。現役時代は年がら年中、九分九厘取れるはずのない「真相」を、必死になって探るような年月でした。時には社説と反することも書きましたし、記者生命が終わるかなと思ったことも一度や二度ではありません。

「手に汗握る」といわれましたが、実は本当に七転八倒した内容については、書けないんですよ。昭和天皇の病気から崩御、そして皇太子妃問題や人格否定発言などの生々しい「真相」については、書けるだけの年月が経っていない。

―話せない、書けないことだらけの記者人生から見た、皇室とはどんなものだったのでしょう。

皇室は謎のミラーボールのようなものです。いろんな角度から照らさなければ光ってくれない。それが時と共に曇っていったり剥がれ落ちたり、まばゆく輝いたり、いかがかと思われる側面を覗かせたり……。

その一つ一つの側面を書くことによって、いつの間にかジグソーパズルのように一つの輪郭が浮かび上がってくるように思います。この本で「客観報道」の裏の自分の思いが、半分くらいは吐き出せたかなと思っています。(取材・文/安藤健二)

『週刊現代』2018年9月22・29日号より