Photo by iStock

皇室を30年以上側で見続けてきた名物記者が知る「陛下のお心」

「心」を推し測る30年だった

簡単には分からない皇室の世界

―岩井克己さんは朝日新聞で、30年以上にわたり皇室取材を続けてこられました。

社会部で都庁を担当していたら、「2年ほど」と宮内庁担当を命じられた。両陛下(当時の皇太子ご夫妻)の韓国訪問中止、昭和天皇の闘病の報道に始まり、気がつけば昭和、平成とずっと皇室担当ですね。定年後も嘱託としてウォッチし続けています。

―取材の「余話」を、コラムとして雑誌『選択』で連載し、それをまとめたのが本書です。この30年が、日本の歴史においていかなる時代であったのか、社会の変動と皇室がどうかかわってきたのか、新元号のもと、皇室と日本はどうなっていくのかを展望しています。

 

皇室取材は制約だらけです。そんななかで、天皇・皇后の側は、これをどう見ているのか、どう感じるのかとか、どうしてこういう行動が出てくるのか、その「心」を一生懸命推し測る30年間でした。

Photo by gettyimages

分かりやすい図式で皇室を自信たっぷりに論じる人も多いですが、長年近くで見続けてきた私からすると、とても図式化できるほど生やさしい道のりではない。「精密機械」の奥の奥まで分け入らないと、皇室は分からないんです。だから、宮中で目にしたもの、耳にしたもの、感じ取ったものは書き残しておくべきだと考えたのが拙著の『皇室の風』本です。

想定した読者の第一は天皇・皇后、第二が皇太子ご夫妻ら皇族方で、第三が宮内庁記者クラブの後輩記者たち。第四が宮内庁の役人たち―くらいのつもりで書いてきました。一般の方々に読んでいただければ嬉しいですね。

―合計117本のコラムのテーマは縦横無尽で、譲位や女性天皇の問題についても踏み込んでいます。新元号のもと、新しい象徴天皇制がどうなっていくのか、問題提起もされていますね。

昭和の象徴天皇制と、平成の象徴天皇制は、まったく違うものです。次の代の象徴天皇も、平成のような形はおそらくとらないでしょうし、とれないでしょう。象徴天皇制の位置付けも、代替わりすれば、次の世代、その次の世代へと流動化していくはずです。

今の天皇・皇后は、戦前の帝国憲法時代の天皇制の反省を踏まえ、膨大な犠牲を生んだ戦争は絶対にあってはならないと考えてこられた。しかし戦争を知らない世代に、これをどう受け継いでいくかが問題です。

雅子妃はいまだに現在の皇室という環境にすら適応できていない状況です。新天皇・皇后が、新しい時代の天皇制の形をどう作っていくかが、まだ見えていない。そこは危惧するところです。