24時間の環境管理…スマートハウスが人間の「快適さ」を激変させる

「環境のデトックス」が必要になる
塚越 智之 プロフィール

「環境のデトックス」のススメ

ではスマートハウスが全世帯に普及する近い将来、自動的に節電したり、事前に病気を察知してくれる便利さと、暮らしの中の多様で豊かな経験をどのように共存させていったら良いだろうか。

鍵となるのが、縁側やバルコニー、屋上といった部屋の内側と外側の境界にある場所なのではないかと、私は考えている。

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こうした場所は、外気を感じながらも、屋根が掛かっていたり、部分的に壁で囲まれていたりと室内の雰囲気が残る所だ。今まででこうした場所は、屋内と屋外を緩やかにつなぎ、限られた面積の中でも住空間の広がりを感じられるようにと、中間的な領域としてその在り方が試行錯誤されてきた。

しかしHEMSが全住宅に普及する近い将来、こうした場所は室内外を繋ぐ中間な場所というだけでなく、HEMSの環境管理の及ばない数少ない生活の場という意味をもつことになるだろう。

これからの住宅は、より積極的にこうした場所を取り入れ、HEMSが提供する"快適さ"とは異なる快適さにでくわす余地を残しておく必要があるだろう。

 

こうした場所と住まい手が関わることが、暮らしの中の多種多様な経験を育み、HEMSが示す”快適さ”を相対化しながら、自らに快適さを獲得しようとする姿勢を養なってくれるはずだ。

それは、スマートフォンが普及し便利になった一方で、常に多くの情報にさらされるストレスから逃れるため、携帯の電波の届かない場所を求めるデジタルデトックスのように、変わらない環境が繰り返される室内をひと時離れ、多様な経験を求める「環境のデトックス」とでも言えるものだ。

環境問題やエネルギー問題が喫緊の課題である今日、無理なく効率的に節電や発電ができるスマートハウスの重要性を否定することはできない。しかし、そうしたテクノロジーが私たちの生活にとって何を意味し、どのように向き合っていくべきか考えることを忘れないようにしないといけない。

何故ならば、考えることをやめることは、私たちの存在の根底を担う暮らしがテクノロジーによって飼いならされ、動物化していくことを受け入れることに他ならないのだから。