24時間の環境管理…スマートハウスが人間の「快適さ」を激変させる

「環境のデトックス」が必要になる
塚越 智之 プロフィール

一つ述べておきたいのは、こうしたスマートハウスを巡る動きが活発化したのが、2011年の東日本大震災以降であることだ。震災時の津波による福島原子力発電所事故の影響で日本は電力の供給不足となった。そして、化石燃料に依存したエネルギー構成へと逆戻りしたことで、エネルギー安全保障上の懸念が浮上した。

事態を改善する一つの策として、政府は自立し安定した電力供給が可能なスマートハウスの普及に力を入れることになったのだ。平成27年の資源エネルギー庁の調査会では、2030年までに全ての住宅にHEMSを導入することを目標に掲げていて、現在では様々なハウスメーカーがスマートハウスを販売している。

 

スマートハウスという名の支配

ここまでの話を聞くと、HEMSを住宅につけるだけで、環境に優しく、ストレスレスで、快適な暮らしができそうな気がする。しかし、どこかスッキリしないのは私だけだろうか。

原因はいくつか考えられるが、その一つは、私たちが「節電するようコントロールされているかもしれない」という気持ち悪さがあるからだろう。

法学者のローレンツ•レッシグは人の行為を規制するものとして、「法」以外にも「規範」、「市場」、「アーキテクチャ」という要素があると著書で述べている。

「規範」による規制とは、「電気を無駄にするなんて環境に対する意識が低い」といった倫理感をつくりだすこと、「市場」による規制とは「電力消費ピーク時の電気代を上げて節電を促す」というように、ある行為に対して経済的メリット/デメリットを発生させることをいう。

それに対して「アーキテクチャ」による規制とは、物理的、技術的な障害を設けることで人をコントロールすることを指す。HEMSで言えば、室内外の環境を感知し家電を自動的にコントロールして、人が電気を無駄にできない状況をつくることがこれに当たる。

社会学者の宮台真司はこの本の書評において、法による規制は人々に不自由さを感じさせるため意識されやすいが、規範や市場、アーキテクチャといった規制は、後者になるほど、その存在が意識されににくいことを指摘している。

そう考えると、スマートハウスに対するスッキリしない気持ちの原因とは、「エネルギー安全保障」という政策のもと、私たちにとってもっとも身近なものである「生活」が、勝手にコントロールされてしまうことに対する漠然とした不安だったのかも知れない。

快適さは誰のものか

しかし、HEMSへの違和感の原因は、それだけに止まらない。家電の調整や制御が、人の手から、自律的・自動的なテクノロジーへと移ることで、私たちの「快適さ」の中身が変わってしまうかもしれないからだ。

家電製品協会はスマートハウスが住宅の環境をコントロールする際の参考として、IEA国際エネルギー機構の基準をあげている。ここでは、人が暑くも寒くも感じない状態を「快適」としていて、具体的な温度や 湿度、室内気流の数値が定められている。

室内の明るさに関しては日本工業規格が部屋の用途ごとに必要な明るさを定めていて 、こうしたものがスマートハウスのコントロールする環境の基準として参照されることだろう。