〔PHOTO〕立木義浩
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カサノヴァ「天才プレイボーイの生涯」を紐解く

タリスカー・ゴールデンアワー第18回(前編)

提供:MHD

鹿島茂教授には編集者時代に本当にお世話になった。はじめて鹿島教授にコンタクトを取ったのは、教授が『パリの王様たち』を上梓したころだったと記憶している。

この本は、ユゴー、デュマ、バルザック三大文豪大物くらべの痛快な読み物であった。3人揃って子供のころ、「ナポレオン皇帝万歳!」とパリの道端から叫んだのである。まさに巻を措く能わずの面白さだった。

そこでわたしは早速会食して密かに温めていた着想を教授に伝えた。わたしの大好きなタレーラン、ナポレオン、フーシェの3人の並列評伝を書いてくれませんかと頼んだのである。鹿島教授はこの企画を二つ返事で引き受けてくれ、日本版PLAYBOYに3年にわたり連載してくれた。多分、その連載のいちばんの愛読者は、わたしであっただろう。

次に鹿島教授にお願いした企画は、大好きな「カサノヴァ伝」であった。この連載も日本版PLAYBOYではじめたのだが、悲運にも同誌が休刊となったため、連載も一時中断されてしまった。だが、紆余曲折を経て、このほどやっと『カサノヴァ:人類史上最高にモテた男の物語』として上下2巻に纏まり上梓されたのである。

この書は、男にとっては、女を口説くための指南書であり、また女にとっても、口説かれ方を研究できる稀覯本と言えるのではないだろうか。

(構成:島地勝彦、撮影:立木義浩)

* * *

シマジ: 鹿島教授、ようやく我らがカサノヴァが上梓されましたね。おめでとうございます!

さあさあ、まずはタリスカースパイシーハイボールをどうぞ。それでは、こう言って乾杯してください。スランジバー、カサノヴァ、ゴブラー!

一同: スランジバー、カサノヴァ、ゴブラー!

鹿島: これがシマジさんイチオシのタリスカースパイシーハイボールですか。名前の通り黒胡椒がいいアクセントになっていてスイスイいけますね。うん、うまい。

鹿島: ところで、今のおまじないみたいな言葉はどういう意味なんですか?

シマジ: 相棒のボブから説明してもらいましょう。

ボブ: これはですね、ゲール語で「カサノヴァよ、永遠なれ」という意味になります。「スランジバー、○○、ゴブラー!」はスコットランドのバーで毎晩耳にする乾杯の言葉です。

鹿島: なるほど。今日はシマジさんとボブさんがバーマンで、ぼくが客となってお話しすればいいんですね。

ヒノ: そういうことです。今日はタリスカースパイシーハイボールを召し上がりながら、鹿島教授の新著『カサノヴァ』について徹底的に語ってください。

鹿島: わかりました。でもね、『カサノヴァ』は半分シマジさんの作品みたいなものですよ。シマジさんの情熱の賜物です。やっぱり編集者は、自分が読みたいものを自分の気に入った著者に書かせるという醍醐味を味わうくらいでないと、読者も物書きも興奮しないでしょう。でもいまやシマジさんみたいな編集者はなかなかいないですね。

立木: シマジ、今日はお前がヤケに褒められているじゃないか。

鹿島: そういう立木先生もぼくの意見に同感でしょう?

立木: おれとシマジとの場合は、腐れ縁だからね。コイツを1人にしておくとなにをやるかわからないから、オレはこうしてこき使われながら一緒にいるんですよ。

ヒノ: たしかに、自分が読みたいものを作家に書かせるというのは、編集者としていちばん贅沢なことですよね。シマジさんはどんな風に鹿島教授をたらしこんだんですか?

鹿島: ある日、シマジさんがジャン・オリューの『タレラン伝』に感動して、タレーラン、ナポレオン、フーシェの3人の並列評伝をPLAYBOYで連載してみないか、と頼みにやってきた。その連載は3年で終わると、今度は「天才プレイボーイの生涯」をPLAYBOYで連載しないか、とぼくに頼んできたわけです。

シマジ: あっ、そうだ。そのおれのアイデアで連載したタレーラン、ナポレオン、フーシェの評伝は、のちに『情念戦争』として集英社で単行本化されて、その後、お前のところの講談社学術文庫に入ったんだよ。

ヒノ: そうだったんですか。ありがとうございます。さすが、すばらしい仕事です。

鹿島: しかも、ヒノさん。地味ながらいまでも版を重ねているんですよ。

ヒノ: それはますます感謝感激であります。ところでシマジさん、またどうしてカサノヴァを思い付いたんですか。

シマジ: おれがもっと若く陽気だったころ、窪田般弥訳の『カサノヴァ回想録』全6巻を読んで感銘を受けたことを思い出したんだよ。あの長い長い女たらしの伝記を鹿島流に噛み砕きながら要約したらきっと面白いだろうと思って、鹿島教授にまたPLAYBOYで連載をお願いしたんです。

鹿島: 言うのは簡単ですが、『カサノヴァ回想録』というのは要約するのが本当に大変なんです。なにせ文庫版でも全15巻あるんですから。

ヒノ: たしかに、とんでもなく長いですし、それを退屈させないように要約するのは至難の業ですね。

鹿島: そう。だからむかし共立女子大学で河盛好蔵さんが「学生に卒論なんて書かせるよりも、要約させたほうがよっぽどためになる」と言ってました。ちゃんと読み込んで的確に要約しないと、ストーリーが繋がらなくなるし、要約にならない。とくに『カサノヴァ回想録』は長くて、ただ読むだけでも大変なんです。

シマジ: そうね。短くするだけじゃなく、面白くなくちゃいけない。

鹿島: しかもカサノヴァを書くと死ぬという伝説があるんですよ(笑)。むかし、岸田國士という人が『カサノヴァ回想録』の全訳に挑み、途半ばで亡くなってしまったんです。

シマジ: それで鹿島教授はなかなか書き始めてくれなかったんだ。

鹿島: それもありましたが、偶然、ほぼ完璧版といえるものが手に入ったんですよ。いままでのものは縮約版が多かったんですが。

シマジ: フランス語で手に入ったんですか。

鹿島: そうです。注釈とか、地図とかが詳細についているんで、これさえあればなんとかなると思ったんですが、読み込むのがまあ大変で(笑)。

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