9月28日に、ついに念願のナスダック上場を果たしたのが「いきなり!ステーキ」を経営する「ペッパーフードサービス」。日本企業でナスダックに上場しているのは2018年8月の時点で10社あまり。飲食店業界では日本初だ。その大きな夢を実現した一瀬社長に会って私なりに学んだ「飲食店経営者として成功するための10ヵ条」をまとめてみたいと思う。
その前に、まず大前提として、一瀬社長が飲食店経営者として「お客様に美味しいものを食べてほしい!」という熱い思いを持っていることをお伝えしなければならない。
後述もするが、飲食店をビジネスとして成功させることができたのは、儲けると同時に、美味しく安全に食べてもらいたいという強い思いがあればこそだ。前回書いた原価率の高さは、「本当に美味しい肉を食べてほしい。だからこそお客様がいらっしゃる」という信念によるもの。美味しいものを食べてほしい、という思いと、それをいかにして商売として成功させるか、の二本立てが基礎としてあることを念頭に置いて読んで欲しい。
これは、第1回目のインタビューに詳しく書いたことだ。危機に直面した時、諦めて投げ出さずにその原因を冷静に分析し、問題点を解決することで飛躍につなげて行くこと。まずは、経営者として大切な心構えだ。
かつて、一瀬社長は「社員を叱れない社長」だったそうだ。
28歳で独立開業したレストランが順調に成長し、4店舗まで増えた頃、辞められるのを恐れて従業員を叱ったり意見したりすることができなくなった。従業員の統制が取れなくなったために赤字から倒産寸前に。その時になってようやく自分の間違いに気がついた。一大決心をした社長は、従業員の給与をカットし、定期昇給や賞与も取りやめるという厳しい経営再建計画を打ち出す。当然、社員は大反発だ。
「社長、そんなことをしたら全員辞めますよ。全員辞めたら商売ができなくなりますよ」
ある店長の口からそんな言葉が飛び出したが、社長は引き下がらなかった。結局、辞めた従業員は一人もいない。なんとしても会社を改革していくという強い決意が伝わったのだ。
「叱られたから辞めるという従業員はいませんよ。理不尽な叱り方でない限り。叱らない社長に絶望して辞めていくんです」
そんな一瀬社長の言葉は、私には耳が痛い。八ヶ岳でカフェを経営していた時、従業員に対して毅然とした態度を取ることができず、結果的に、一番の稼ぎ時である夏の直前に辞められてしまったからだ。
叱るべき時にはちゃんと叱らなければならなかった。今更だが、そのことを思い知らされた。