「地震で全域停電」という惨事を起こさないための、三つの対策

やっぱりバランスが大事だ

再び起こる原発論争

9月6日未明北海道胆振(いぶり)地方を震源とする最大震度7の地震が起きた。被害に遭われた方にはお見舞い申し上げたい。

人的被害もさることながら、全北海道の295万戸の停電には驚いた。なぜ全道が……と言うことを理解するために、学生時代に使っていた電気工学の教科書を取り出してみた。それで、理解できた。やはり理系科目は勉強しておいて損はない。

一般の家庭などで使われているのは「交流」電気である。sinカーブの曲線であり、電流・電圧が一定の周期で変化している。この電流・電圧波形は交流電源にとって極めて重要だ。この波形のずれを「位相」といい、交流電気では位相のコントロールがポイントになってくる。

 

ここで、ある発電所がダウンとしたとする。それによって電力供給が少なくなると波形の振動は少なくなる。1秒間に繰り返される周期の数を周波数というので、周波数が小さくなるといってもいい。位相がずれると電気機器には不味いことになるので、他の発電所も止めなければならなくなり、結果、ネットワーク全体でブラックアウトになる、というわけだ。

理屈はわかるが、それでも全道のネットワーク全部が停電するというのはあまりに酷な話だ。今回の場合、苫東厚真火力発電所(165万kW)が地震によって停止したのが大きな原因だ。地震当時、全道の需要の半分程度を苫東厚真火力が担っていたといわれる。

ここで、原発反対派と原発推進派の間で、ちょっとした論争がある。つまり、「泊原発(207万kW)が再稼働していたらどうなっていたか」という議論だ。

現実には、泊原発は2012年5月に定期点検に入り、その後停止したままである。これは、東日本大震災後、すべての原発を一旦停止させ、「その後の厳格な安全基準をクリアしたものから再稼働を認める」という政府方針による。この方針は民主党政権下で作成され、自公政権も継承している。この安全審査で再稼働している原発は全国で9基(関西電力4基、四国電力1基、九州電力4基)だ。

もちろん、安全基準が適切かという議論はあるものの、結果として今の安全審査をクリアしていないから泊原発は再稼働していないわけだから、「もし再稼働していたら」というのは机上の空論、ないものねだりでもある。

原発反対派は、泊原発が再稼働していなかったので、よかったという。もし再稼働していたら、北海道の電力ネットワークが機能不全になっているため、自動的に原発は停止、外部電源喪失となって、福島原発事故の再来、となったという指摘だ(いまは泊原発は再稼働していないので、燃料の温度も高くないため、外部電源なしで冷却可能だという)。

この意見の典型は、7日の東京新聞社説「全道停電 集中は、もろく危うい」http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018090702000170.html)だ。この記事では、電力源の分散をいいつつも、原発はダメというちょっとわかりにくいロジックになっている。特に、「今回の地震でも泊原発の外部電源は、震度2で喪失した。」という表現で、原発の危険性を強調している。

この書き方は、実はおかしい。正しく言えば、泊原発のあたりの震度は2であったが、100キロ離れた苫東厚真火力発電所がやられてしまったため、全道の電力ネットワークがブラックアウトとなり、その結果、泊原発の外部電源も喪失したのである。だから「震度2で外部電源喪失」と書くのではなく、「苫東厚真火力発電所が停電したため、外部電源喪失となったが、非常用電源が正常に作動したため、問題は起こらなかった、と書くべきだ。

これは、原発の賛否とは関係のない、客観的な事実である。にもかかわらず反原発のスタンスをとるマスコミは、煽ることが先にありき、なのか、こうした客観的事実を正確に書かない。9日朝のTBS「サンデーモーニング」でも、「3.11のように、震度2の地震で全電源喪失状態になった」といっていた。酷いものだ。

一方、原発推進派は「泊原発が再稼働していれば、苫東厚真火力発電所への過度な集中はそもそも解消されていただろうから、そ全道のブラックアウトは起こらなかった」という。全体の半分の出力を担う発電所が落ちれば、全ネットワークが落ちるのは当然だが、泊原発が動いていれば、一カ所集中とはならなかったから、一部の地域が停電となるだけで、全道を巻き込む停電にはならなかった可能性がある、というものだ。

筆者には、後者の方が説得力があるように思えるが、いずれにしても、こうした議論は、北海道電力の当事者や政府も入れて本格的なシミュレーションを行うなど、科学的な議論を徹底的に行うほうがいい。秋の臨時国会で、この問題について与野党が活発な論戦を行うことを期待したい。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら