# 災害 # 関西国際空港

関空孤立も北海道停電も、前から「指摘されていた弱点」だった

では、なぜ改善できなかったのか

強い勢力を保ったまま近畿地方を直撃した台風21号と、北海道で観測史上最大の震度を記録した北海道胆振東部地震――。

先週、日本列島を相次いで襲った大型の自然災害は、多くの死傷者を出す一方で、西の空の玄関・関西国際空港と北のライフラインである北海道の電力ネットワークの脆弱性を浮き彫りにした。いずれも、平時の備えを怠っていた感は否めず、十分な安全マージンの確保が急務となっている。

 

本当の原因は…?

まず、関空の最新状況と被害が深刻になった原因を見てみよう。

台風21号の影響で、関空では先週火曜日(9月4日)午後、強風で流されたタンカーが激突して連絡橋が破損したのに続き、その1時間後には滑走路に茶色い濁流が流れ込んだ。すっかり冠水したA滑走路の水深は、40~50センチ・メートルに達したという。そして、関空は午後3時に閉鎖され、約3000人の利用客が取り残される事態に陥った。

深刻な被災状況を受けて、安倍晋三首相は翌6日午前の「豪雨非常災害対策本部会議」で、「(関空の)国内線(の運航)を明日中に再開し、国際線も準備が整い次第再開する」と復旧を急ぐ考えを表明。7日には、被害の少なかったB滑走路を使い、日本航空と関空を拠点とするLCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションの2社が、なんとか19便の運航に漕ぎ着けた。さらに8日になると、全日本空輸も加わって国際線を含む合計47便を運航したという。

しかし、復旧はまだ緒に就いたばかりだ。平時には、貨物を含む1日の発着数が500回を超える関空の実情を考えると、再開分はいまだに1割に満たず、本格復旧には程遠い。

石井啓一国土交通大臣は7日の記者会見で、被害が大きかったA滑走路の暫定運用開始は9月中旬にずれ込むとの見通しを語り、近隣空港の代替利用も模索せざるを得ないと説明している。

これまでのところタンカーが連絡橋に激突した原因は不明だが、滑走路が冠水した原因は明らかだ。高潮・高波に伴う海水の侵入を阻む護岸対策が不足していたのだ。

住宅街に建設したことで発着時間を制限せざるを得なかった大阪国際空港(伊丹空港)の轍を踏むまいと、関空は計画段階から1日24時間いつでも離着陸ができる空港を目指し、騒音を理由に住民から訴訟を起こされないよう、陸地から5キロ近く離れた泉南沖の海上を建設候補地とした。

しかし、この場所は平均20メートルと海上島建設地としては水深が深いばかりか、海底の土壌も約18 メートルの粘土層など軟弱な土壌が堆積する場所だった。つまり、当初から空港の建設に不向きな立地とされていたのだ。

実際、今回冠水がひどかったA滑走路がある1期島は、今なお1年におよそ6センチ・メートルのペースで地盤の沈下が続いており、通算の沈下はおよそ3.4メートルに達したという。

もちろん、まったく護岸工事をやっていなかったわけではない。関空では、「50年に1度の高波にも耐えられる対策を打つ」ことを目指して、2004年から護岸を海面から約5メートルの高さまでかさ上げした。1961年の第2室戸台風の記録(最高潮位293センチ・メートル)を考慮した対策だったという。

しかし、今回はそれを上回る329センチ・メートルの潮位に見舞われて、滑走路や駐機場が冠水する事態に見舞われてしまったのである。

今後も地盤沈下は続くとみられるうえ、南海トラフ地震が起きれば大津波の襲来もあり得るのが関空だ。十分な安全マージンを確保する対策を講じるか、さもなければいっそ近隣空港に機能をシフトすることも視野に入れざるを得ない状況だ。

 
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