ブラックアウトはなぜ起きた?北海道電力が抱える「脆弱性」の本質

他の電力会社とは全く状況が違う
小澤 守 プロフィール

トラブル増加と原発停止の関係

トラブル増加の一つの原因として考えられるのは、泊原発の停止が長期化し、その補填のために定期点検が繰り延べされている可能性である。

火力発電所は元来、高温の燃焼ガスと水・水蒸気の熱交換によってタービンを回して発電するもので、火炎の温度と水側の温度差は水管壁を挟んで1000度近くにも達する。また燃料が石炭や重油の場合、燃料に含まれる不純物によって伝熱管腐食が起こりやすい。

水側に関しても、水質管理を誤れば設備の腐食を引き起こすし、水処理の問題がなくてもエロージョン(浸食)による減肉(配管が薄くなること)から逃れがたい。現に苫東厚真でも、減肉によるトラブルが頻発していた。

そのため十分な定期点検は必須であるが、実施するには設備の余裕(発電機を完全に停止して点検整備しても電力供給に支障が生じない)がなければならない。泊原発の停止によって余裕があまりない北電では、点検の先延ばしは需要の面からすれば必要であるが、供給の面から見れば、かなり危ないことといえる。

 

福島第一原発の炉心溶融事故以来、原発に対する安全規制が見直され、再稼働の審査が長期化し、対策費用が厖大になったことなどもあって、全体で207万kWに達する泊原発の再稼働が見渡せない状況にある。

またそれに関連して、火力発電の割合が事故以前の40%から70~80%にまで増加したため、苫東厚真のような海外炭や重油を用いた発電所を運用している場合には特に燃料費が高騰した。事実、北電の燃料費は2013年度には2010年度に比べて約2000億円も増加したという(2014年7月の北電資料「電気料金の値上げ申請について」)。これが同社の経営を圧迫しているのは間違いない。

一般に火力プラントはスケールメリットがあり、大規模な発電所であるほど、相対的に運用の経費が安くなる.通常であれば中小の多くの発電所、とくに老朽火力を運転するより、比較的新しい大型火力を運転するほうが経営的にも有利であるのは言うまでもない。

東日本大震災と福島第一原発事故で得られた教訓に、多重性のみならず多様性の重要さがあげられよう。その点からすれば、北電の中心となる火力発電所は、苫小牧の工業地帯近郊に集中していたといえなくもない(下図参照)。

北海道電力の主な電力設備分布図(北電公式サイトより)

ただ、たとえ火力発電所が北海道全域に広く分散していたとしても、北電の総需要電力を考えれば、そこまで大きな問題とは言えない。今回も事実上、地震の被害を直接受けたのは苫東厚真のみであり、2日後には一部を除いて停電が解消されている。水力発電所も含めて北電の力を総動員させ、停電対応に当たられた関係者の努力に敬意を表したい。