10年あれば世の中は大変化する
テクノロジー業界の10年先を見通すのは難しいが、まずは過去10年で何が起こったのかを振り返ってみよう。

(『銀行はこれからどうなるのか』執筆時、2017年の10年前にあたる)2007年は、いまでは当たり前のハードウェアが発売された年だ。それはアップルのiPhoneである。
発売当時は3G対応ではなかったために、売れ行きは芳しくはなかった。しかし、その後は3Gモデルを投入後に世界で爆発的に売れ、アンドロイド端末を含めたスマートフォンが普及する大きなきっかけとなったといってもよい。
現在、日本では幅広い世代にスマートフォンが使われるようになった。アプリの使い勝手とともに、さまざまなサービスは個人との接点を変化させた。金融も含めて、サービスにおいて最も重要なのは「個人との接点の大きさ」なのだ。
アプリであれば、利用者数(MAU:月間アクティブユーザー数、DAU:日次アクティブユーザー数など)と、利用回数と、1回あたりの利用時間である。この3つの体積の大きさが「個人とサービスの密接さ」を表す。
たとえば、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)には個人口座が約4000万口座あるが、月にどれくらいの人が、何回くらい、1回あたりどの程度の時間をMUFGによるサービスの利用に費やしているのか。
また、口座数が少ない地方銀行では、さらにどの程度まで密接度合いが減少するのかというのがカギとなる。
インターネットやスマートフォンが普及するまでは、銀行の個人利用者と銀行との接点は「支店の窓口」や「ATM」というシチュエーションに限られていた。
したがって、それらの数自体が銀行の個人に対する影響力やシェアとして評価されてきた。自宅に近い銀行の支店やATMが仕事場の近くにもあるからという理由で銀行が選ばれてきたこともあるはずだ。
しかし、そうした状況も、いまやコンビニエンスストアでさまざまな銀行のサービスが利用できるようになり、差別化要因ではなくなった。「いかに個人との接点を強化できるか」もFinTechのポイントである。