北海道地震で起こった「全域停電」他人事と思ってはいけない

専門家は「どこでもあり得る事態」と指摘
河野 正一郎 プロフィール

「分散自立電源」とはなにか

そして最大の疑問は、北電はこうした状況を知りながら、なぜ発電量の半分以上を苫東厚真に頼り続けていたのか、という点だ。

阿部さんは「大きな発電所をドンとつくったほうが電力会社にとってはコストが安いからでしょう。数十万キロワット程度の発電所にしてリスクを分散しておけば、全域停電は避けられるのですが、それはコストがかかる。しかし、災害時のリスクを考えれば、それは必要なコスト、とみるべき。やはり、これからは分散型を目指すべきでしょう」と語った。

電力会社が地域の電気供給を独占していた時代は、コストを重視する電力会社は分散電源を敬遠してきた。しかし、電力自由化で新たな電力会社が競争で分散電源を導入するようになり、現状では「発電量当たりの建設費はほとんど同じレベル」(阿部さん)だという。

 

阿部さんは、電力会社が持つ巨大な送電網(大系統)を否定しているわけではない。小規模で大系統とは切り離せる電源系統(分散自立電源)をつくったうえで、大系統の電源と分散自立電源を組み合わせた「ハイブリッド電力系統(デジタルグリッド)」にしたらどうかと提案している。

端的にいうと、太陽光や風力発電で数十〜数百世帯をまかなえるほどの発電所をつくる。この分散自立電源は通常、大系統電源の補助的な役割をしているが、非常時には大系統とは別に、各世帯に電気を供給できる。大系統と切り離された電源だから、今回のような一斉の連鎖停電は避けられるという考え方だ。

この分野は現在、研究が進んでいる。インターネットのIPアドレスを活用するなどして、分散自立電源が互いに送配電・電力の融通ができるようになるのだという。アフリカやアジアの未電化地域で電気を売る事業が始まっているが、こうした事業の電力は、スマホのアプリで受けた注文に応じて、配電量を調整できるようになっている。

日本では信じられないが、世界ではそうした事業はすでに実用化されているのだ。

あらゆる社会政策はコストと見返りを秤にかけて実施される。しかし、災害の多い日本で、電力というライフラインの設計が「コスト優先」であっていいはずがない。今回の地震でも、発生時期が後にずれて厳寒の北海道だったら、事態はさらに悪化したかもしれない。いまや、対策は待ったなしとも言えるのだ。

阿部さんは取材の終わり際に、「北海道で起きたことを他人事に思ってはいけません。全域停電はどの地域でも起きうることですから」と話した。