北海道地震で起こった「全域停電」他人事と思ってはいけない

専門家は「どこでもあり得る事態」と指摘
河野 正一郎 プロフィール

もしも泊原発が動いていたら…

今回の地震を受け、「泊原発が稼働していたら、苫東厚真への依存度は下がっていたので全域停電は避けられた」という意見を言う人がいる。本当にそうなのか。

ある原発研究者は、名前を明記しないことを条件にこう答えてくれた。

「泊原発が発電していて、苫東厚真への依存度が低くなっていれば、理論上は全域停電は避けられたかもしれません。ただ、泊原発が動いていたら、もっと大変なことになっていたと思います」

この研究者によれば、苫東厚真が停止して、他の火力発電所が停止することで電力の需給バランスが崩れると、泊原発から発電された電力は「出口」を失い、タービンが回転数を上げる。原子炉内には蒸気がたまるので、それを排出しなくてはいけない。制御棒を注入して核反応を抑えないといけない。炉内を冷やすため冷却水を注入しないといけない。

重要なのは、これらの作業にはすべて電力が必要だということだ。もしも電力が失われていたら……。東日本大震災のときの東京電力福島第一原発で起きた「全電源喪失事故」の再来、となっていたかもしれない。

今回の地震時、泊原発は約8時間にわたって外部電源を失った。幸いにもいまは「稼働停止中」であったため、大事故にはつながらなかったが、全域停電という事態が起きれば、原発が暴走しかねない状況になることが、今回の地震でわかったのだ。

 

この原発研究者はこうも話した。

「いま規制委は各地の原発の再稼働にあたって安全審査をしていますが、全域停電で外部電源を失う事態は想定されていません」

次の大災害で“想定外の原発事故”が起きることは許されない。今回の全域停電という事態は、原発の安全審査の今後にも影響を与える可能性がある。

では、道内の発電所がストップした際に本州側から支援するシステムはないのか。北海道と本州の間には、電力を融通し合うために海底ケーブルが敷設されている。しかし、このケーブルの送電量は最大60万キロワットで、最大出力165万キロワットの苫東厚真発電所の36%しかカバーできない。

前出の阿部さんは「瞬間的な不安定さを解消することは十分可能だった。しかし、このケーブルの制御システムでは送電できずに、むしろ系統電源(北電の電力供給電源)の喪失とともに自動停止してしまった」と話す。

そもそも、北海道と本州の間に敷かれていたケーブルは、緊急時のフェイルセーフの役割を果たす仕組みになっていなかったということだ。

ケーブルの送電量は2019年に90万キロワットに増える予定だが、このような緊急時の融通の仕組みを盛り込めば、十分今回のような連鎖停電事故を防ぐことはできる。国や電力会社は早急に制御システムを変更する必要があるだろう。

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