中国の残虐事件で垣間見えた「大陸の闇組織」の存在

隠された暗部を再認識する

事件の顛末

2018年8月27日の夜、その殺人事件は江蘇省東南部の昆山市で発生した。

同日21時30分頃、劉海龍の運転する乗用車(BMW)が昆山市の震川路を西進して順帆路との交差点に差し掛かった時、劉海龍がハンドルを強引に右に切って軽車両専用道路へ侵入したため、軽車両専用道路を走行していた於海明が乗る自転車と接触しそうになった。

これに怒った劉海龍は車を急停止させて下車すると、間一髪で危険を回避して怒りを抑えていた於海明の所へ駆け寄って罵声を浴びせた。売り言葉に買い言葉、自転車から降りた於海明と劉海龍の間で激しい言い争いになった。

BMWに同乗していた男1人と女2人の説得を受けて一度は車に戻った劉海龍は、すぐに再度下車して於海明の所へ走り寄り、於海明を抑え付けると殴ったり蹴ったりした。

仲間の女2人が暴行を止めるよう忠告したにもかかわらず、劉海龍は聞く耳を持たぬ様子で暴行を続けた。

そうこうするうちに、劉海龍は突然にBMWへ取って返すと、車の中から刃渡り43cmで刃先が鋭く尖った両刃のタガ-ナイフを持ち出して於海明に襲いかかった。劉海龍はナイフを振り回して於海明の首や腰、腿に切りつけたが、柄が血に染まったからか、振り上げた手からナイフがすっぽ抜けて地上へ落ちた。

これをチャンスと見た於海明は、ナイフを拾うとすかさず逆襲に転じ、劉海龍の腹と尻にナイフを刺し、続いて右胸と左肩、左肘に切りつけた。これはわずか7秒間のでき事だった。

傷ついた劉海龍は必死にBMWの方へ走り、後を追った於海明は手に持ったナイフで2回切りつけたが、いずれも劉海龍には当たらず、そのうちの1撃はBMWの車体左側を傷つけた。

やっとのことでBMWにたどり着いた劉海龍は、運転席のドアを開けて、車内から携帯電話を取ってズボンのポケットに収めた。これを見て、劉海龍に携帯電話で仲間を呼び集められては困ると考えた於海明は、劉海龍のポケットから携帯電話を奪い取った。

於海明に殺されるという恐怖に怯えた劉海龍は、よろけながらBMWから東北に30m離れた緑地帯まで逃げたが、そこで力尽きて倒れた。

 

通報を受けて現場へ急行した警察官は、地上に倒れている劉海龍を発見して、救急車の派遣を要請した。劉海龍は到着した救急車によって医院へ緊急搬送されたが、応急手当の甲斐なく同日中に死亡した。

於海明は現場に到着した警察官に劉海龍から奪い取ったタガーナイフと携帯電話を自発的に差し出した後に、現行犯逮捕された。

その後に行われた劉海龍の検死結果によれば、7秒間という短時間に劉海龍が受けた傷は5カ所で、最初に腹部を刺した1撃が腹部大動脈と腸管、腸間膜を破裂させた致命傷であり、開放性の傷口が5カ所、骨折が3カ所あり、死因は出血性ショックであった。

一方の於海明は検査の結果、左顔面にナイフによる擦過傷が1カ所ある以外は、左頸部と左胸の肋軟骨に各1カ所の線状の打撲傷があるだけだった。

昆山市公安局によれば、死亡した劉海龍は甘粛省鎮原県出身の36歳で、昆山市に暫住し、某企業で臨時工として働いていた。加害者の於海明は陝西省宇強県出身の41歳で、昆山市に暫住し、某ホテルで電気工事部門の責任者として働いている。

事件発生時に劉海龍の車に同乗していた3人のうち男1人は於海明に対する暴行に参与したとして10日間の勾留措置を受けたが、女2人は劉海龍が下車するのを引き留めていて、事件には関与していなかった。

なお、事件当日、劉海龍は仲間と酒を飲んだ後にBMWを運転していたが、死亡解剖の結果は、血中アルコール濃度が87mg/100mlで、法定基準の80mg/100mlを超えた酒酔い運転であった。