財務省では昔から「恐竜番付」と呼ばれる怪文書が出回ることが知られている。番付にランクインするのは、部下が恐れる上司たちだ。
依然としてパワハラ体質な官庁ならではのものだが、これを改善しようとする動きがみられている。具体的な解決策として、「360度評価」の導入を検討しているという。
この制度は、上司が部下を人事評価するだけではなく、同僚や部下、場合によっては取引先の担当者などもその評価に加わるというもの。複数の人員が判断するため、能力が比較的客観的に測りやすいのがメリットだ。
だが果たして、財務省にこのような制度はなじむのだろうか。
財務省に限ったことではないが、現在の人事評価といえば、キャリア制度という厳然たる「身分制」が敷かれている。採用時に総合職試験を経た役人はいわば「特急券」を持ち、出世のスピードは「新幹線」並み、それ以外のノンキャリア組は「鈍行普通列車」といわれる。
民間にはない霞が関中央省庁の特色であるが、キャリアとノンキャリアは交わることのない2路線である。
ゆえに本気で財務省改革を断行するには、現代の「身分制」ともいわれるキャリア制度を撤廃する必要があるのは間違いない。今年相次いだ財務省の不祥事は、まさにキャリア官僚のおごりが元凶といえるからだ。