「世界ネオナチ連合」は誕生するのか?〜欧米の地滑り的極右化の行方

そして日本は…?
河東 哲夫 プロフィール

何を狙っているのか

繰り返すが、これら欧州の極右、あるいは強権主義の諸政党を1つのイデオロギーでくくることはできない。彼らの主張は反移民・難民でほぼ共通しているとはいえ、さまざまなのである。

それに政党というのは、車を開発、販売するのに似て、特定の社会グループに目を付けては、その成員に好かれそうな政策を並べて自分を売り込み、議席を得ることを生業とするもので、その際、狙っていることは、マニフェストの実現といった理想主義的・抽象的なことよりも、権力の獲得と維持、それによる自分達の権力欲、名誉欲、物欲の満足なのである。

それは穏健中道勢力の諸政党でも同じことだが、左右の過激派政党が危ないところは、自分達の野心を、暴力を用いてでも実現しようとすることである。

1917年10月(旧暦)、ロシアのボリシェヴィキはわずか数十名の武装人員でほぼ真空化していた権力を乗っ取り、議会を閉鎖して独裁的権力を樹立した。

1932年11月、民主的なワイマール憲法の下で行われた総選挙で国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ)は37%強の得票で第1党となり、ヒトラーが首相に指名されると、翌年3月の国会の火事を奇貨として非常大権を確立、アデナウワー(戦後の首相)等反対派を投獄していくのである。

同じような事態が今、先進民主主義国のいずれかで再び起こるとはちょっと考えられない。経済状態が当時のドイツ、ロシアよりよい上に、マスコミ等の力も強いからである。

そして欧州の極右政党が権力を握ったとしても、独裁的権力の確立はおろか、EU脱退等、思い切った政策転換はしないだろう。

例えばイタリアの「同盟」の場合、ユーロの交換率が高すぎて輸出に不利なことは確かなのだが、EUから得ている多額の補助金を犠牲にしてまでEU脱退をはかることはないだろう。ほかの国でも、反EUを唱える極右政党が政権に加わったところで、EU脱退を実行することはなく、条件闘争の末、妥協するだろう。

イタリアのサルビーニ「同盟」党首などは、EUの欧州議会における極右連合の議席を増やしてEUを内部からこわしていく姿勢を示している――欧州議会での議席数に応じてEUから政党補助金を受領しているにもかかわらず――。

だが、欧州諸国の右翼はそれぞれ異なるもので、EU議会内でどこまでまとまった動きをできるかわからないし、欧州委員会への要求を一本化するのに苦労するだろう。EUに残っていた方が、政党補助金を受領し続けられるので、実は好都合なのかもしれないが。

 

「国際極右運動」のうごめき

革命後のボリシェヴィキ政権、そしてソ連は、国際共産主義運動を展開した。それはコミンテルンという共産主義普及機関を作って、ドイツや日本や中国の共産党を指導し、諸方で革命を起こさせようとしたのである――米国のネオコンは、民主主義を広めるためと称して「レジーム・チェンジ」を世界各地でしかけたが、手法は似ている――。

そして今ロシアはそのイデオロギーを共産主義から帝政時代の帝国主義的国粋主義に替え、世界、特に欧州、米国の極右政党との提携を強化している。

ロシアでは世界の右翼政党を糾合した会議が時々開かれているし、フランスのル・ペン国民連合(国民戦線を改名したもの)党首などはロシアの銀行から融資を受けている。米国からはNational Policy Instituteなどの白人至上主義団体が、ロシアでの催しに名を連ねている。

プーチン大統領は8月18日、オーストリアのクナイスル外相(極右の自由党系。女性)の招待に応じて彼女の結婚披露宴に出席、共に踊っている。ロシアとしては、こうしてEU諸国を自分の望ましい方向に操作したいのだろう。現に、欧州の極右政党の多くは、ロシアのクリミア併合を支持している。

ロシアがこういうことをすると、西側はすぐヒステリックに騒ぐが、大した効果のあることでもなし、やらせておけばいい。