「世界ネオナチ連合」は誕生するのか?〜欧米の地滑り的極右化の行方

そして日本は…?
河東 哲夫 プロフィール

移民、若年層の失業

これら勢力の主張、支持層は一様ではない。分類すると、まず欧州諸国で慢性的な青年の失業問題を背景とした動きがある。

大卒の青年は、社会の格差を解消するためには、排外主義の極右より理想主義の極左になびきやすい。ドイツで言えば西独時代のマルクス主義の極左「ドイツ赤軍」とか、現代で言えばG7先進国首脳会議等に反対デモをしかける「反グローバリズム」運動、あるいは環境保護運動である。

 

他方、余所者を排斥することでうっぷんを晴らそうとする者達は、極右系の運動に身を投じやすい。

極右台頭の第2の背景は、近年、欧州でその増加ぶりが臨界点を超えた感のある、移民・難民への反感である。英国では旧東欧諸国からの移民急増も大きな問題となっているが、他の西欧諸国では中東諸国からの移民・難民が大きな問題となっている。

スウェーデン、デンマークでさえ、移民とその子孫は人口の10%を占めるまでになっており、都市部でのその比率ははるかに高い。

近世以来、強い個人主義を発達させてきた西欧の白人にとって、個人の権利より集団、宗教的戒律を重んずる中東の諸民族は、それだけで反感を感じさせる。

移民、難民は大都市近郊の団地等に集住することが多く、そこは異文化で治外法権の飛び地のようになっている。欧州諸国の白人は、中東諸民族に国土を次第に侵食され、文化も変えられてしまうという恐怖を感じているのである。

そして反移民・難民感情は、反EU感情に結び付きやすい。「ブリュッセルに巣食った頭でっかちの優等生官僚達が押し付けてくる、労働力の移動の自由、あるいは難民受け入れ」への反感が、極右政党の温床となる。

更にものごとを複雑にするのは、余所者排撃はユダヤ人にも及ぶということであり、一部の極右政治家は反ユダヤ主義を公然と口にする。

そしてもう1つの勢力は、旧東欧諸国のポピュリズムと権威主義を兼備した政権与党である。

ソ連圏離脱、EU加盟で、生活が良くなると思っていたこれら諸国の国民は、実際には高率のインフレ、失業で悩まされることになった。ブルガリアでは旧共産党系の政党が一時、権力の座に戻っている。

右翼、左翼の別を問わず、権力を保持するためにばらまきのポピュリズムだけでなく、ソ連時代の強権主義的手法を用いる政党が多く、欧州委員会との間で問題を起こしている。それはポーランド、ハンガリーで特に目立つ。

総括すると、この数十年、西欧諸国が労働力不足を補うために入れてきた中東系移民の数が需要度の限界に達したこと、シリア・リビア難民が一度に押し寄せたこと、2008年のリーマン金融危機がEU域内の格差を助長したこと、更には1991年のソ連崩壊後の東欧圏が未だ不安定であること等、歴史のしわ寄せがポピュリズム、あるいは過激な極右、極左の動きを助長しているのである。