photo by Getty Images

「世界ネオナチ連合」は誕生するのか?〜欧米の地滑り的極右化の行方

そして日本は…?

欧米を徘徊する妖怪の正体

昔、マルクスは「共産党宣言」で、欧州を共産主義という妖怪が徘徊していると書いた。その伝で行けば今はさしずめ、欧州を、そして米国でさえ極右、ネオナチの妖怪が徘徊していると言うべきだろう。もっとも彼らはまだバラバラなのだが。

8月27日、旧東独の都市ケムニッツ――東独時代はカール・マルクス・シュタット――では、ナチ式の敬礼をしながら「外国人は出て行け!」と叫ぶネオナチの若者達が、これに反対する若者達と衝突。多数の負傷者を出した。

旧東独地域は、ドイツ統一以後も生活が良くならないことに不満を有する者達が、極右勢力を支持。昨年9月の総選挙で12.6%の票で94議席も獲得して台風の目となっている、「ドイツのための選択肢AfD」党の牙城となっている。

 

人道主義で鳴るスウェーデンでも、移民排斥を掲げるスウェーデン民主党が、9日の総選挙で第1党の座を獲得するかもしれないと言われている。

2011年7月、あの平和なノルウェーで、極右の青年がただ1人、政権与党の労働党の祭りに乱入、銃を乱射する等して実に80名近くを虐殺したことも記憶に新しい。

米国でも昨年4月、南部の旧都シャーロッツビルに、白人至上主義の極右勢力が結集し、反対勢力との衝突で3名の死者を出した。

ロシアでは、当局に取り締まられて今、下火になっているが、スキンヘッドでスワスチカを掲げる極右グループ――反米、そして白人至上主義――は多く、活躍の場を求めて東ウクライナに「志願」していった者もいる。

さらにそのウクライナの首都キーエフでは、極右と目される暴力集団が反ロ、反西側、反ユダヤの過激な言動で、政治を攪乱している。

世界でいったい、何が起きているのか。何者かが裏からカネを出し、糸を引いているのか? これは、世界の白人の叛乱なのか? 「極右」はいずれかの国で政権を取るのか? 彼らは一体何を望んでいて、彼らが政権を取ると一体何が起きるのか?

極右勢力の伸長は、特に欧州で顕著である。極右の定義はまちまちで、暴力を用いて主張を実現しようとするところでは極左に類似しているが、極右はナチズムへの親和度が強く、イスラム、ユダヤ等異人種を排斥する傾向が強い。

ナチの本家ドイツでは2013年、ギリシャの財政救済、そしてEU、移民に反対して結成された「ドイツのための選択肢AfD」党が勢力を急伸させ、前述のように昨年9月の総選挙では第3党として最大野党に躍進した。

フランスでは、マリーヌ・ル・ペン党首の率いる反移民・反EUのポピュリスト政党、「国民戦線」が、一時は権力の座に迫るところまで勢いを伸ばした。

イタリアでは極右と目される「同盟」が3月の総選挙で17.37%の得票で126議席を獲得、連立与党の中で最有力と目されている。

英国ではBrexitを強力に唱えてきた独立党が、右派ポピュリスト政党に位置付けられ、米大統領選前後には当時の党首ナイジェル・ファラージがニュー・ヨークのトランプ・タワーで、フランスのル・ペン「国民戦線」党首とともに目撃されている。

オランダでは反移民、反EUの右派ポピュリストの自由党が昨年3月総選挙であやうく第1党となるところだったし、オーストリアでは昨年10月の総選挙で、反移民で極右とされる自由党が第2党となり、中道右派の国民党と連立を形成している。

そして穏健で合理精神に富んでいることで知られる北欧諸国でも、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークと軒並み、反移民のポピュリスト政党が議会で有力となり、連立政権に加わっているところもある。 

一方、ポーランド、ハンガリー、ブルガリアといった旧ソ連圏のEU諸国では、ばらまき、権威主義――それはソ連型共産党の遺伝子と言っていい――の政党が政権を取って、反移民の政策を標榜。その権威主義的統治をめぐり、欧州委員会としばしば対立している。