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有名人の命を次々に奪っていく乳がん「手術すべきか否か」の判断

さくらももこさんの悲劇を考える

切らなかった小林麻央さん

乳がん――。キャンディーズの田中好子さんやタレントの小林麻央さんなど、数々の著名人を苦しませ、命を奪ってきた、忌むべき病である。

乳がんは、抗がん剤や手術の進歩により徐々に生存率が高まってきた。日本人女性の11人に一人が乳がんを患うといわれるものの、特にステージⅠの段階で早期発見できれば10年生存率は9割を超えている。

だが逆に、ステージⅣの患者の10年生存率は20%以下と、進行するにつれて加速度的に予後が悪くなっていく。

「乳がんがやっかいなのは、初期の段階ではがんの存在が見落とされがちなことと、進行するにつれて転移しやすいことです。乳腺からリンパ節、骨、肺などに転移するほか、数年経ってから遠隔転移する可能性もあります」(ナグモクリニック総院長の南雲吉則氏)

乳がんは40代から50代にかけて、もっとも罹患率が高くなる。かといって、60代以降に突然発症することも少なくないため、いくつになっても油断できない。

もし、妻の乳房に腫瘍が見つかったら――。あまり考えたくないことだが、放っておけばおくほど死のリスクが高まる乳がん。決断はできる限り早いほうがいい。

現在は乳房温存手術が主流で、広範囲にがんが広がっているケースでなければ、乳房を全切除することはなくなってきている。また、ほかのがんにくらべて乳がんは予後も安定しているほうで、生活の質が急激に低下することはない。

 

ただ、やはり女性にとって乳房にメスを入れるという決断は、簡単にできるものではない。そのため、わきの下など傷が目立たない場所を切開し、がん細胞を切除する術式や、抗がん剤治療、放射線治療もある。

実際、乳がんにおいて「切るべきか、切らざるべきか」というのはもっとも重要な選択だ。小林麻央さんは「切らずに治す」という判断を下し、抗がん剤と放射線治療を重視していた。

肝心なのは患者自身がどのような治療に納得できるかだが、セオリーでいえば標準医療に基づいた乳房温存手術が望ましい。ほかの術式は複雑ゆえに体内を傷つけるリスクがあり、放射線治療のみで完治は非常にむずかしいからだ。

いまは乳房の再建手術が進歩していて、がんの切除を行うと同時に再建することもできる。精神的なストレスも以前より少なく済ませられるのだ。

ほかのがんとくらべて、乳がんの手術は身体への負担も少なく、高齢者でも受けられる。

乳がんは早いうちに切除手術をする。乳房を失うのはつらい選択だが、妻に長生きしてもらうにはそのように考えておくのが建設的だろう。