「紀州のドンファン事件」あの家政婦が、銀座のホステスになっていた

一体なぜ…?
吉田 隆

日常を取り戻したいのだろう

「Kさんを口説く人はいないから安心だよね」

私が茶化した。

「そうなのよ。ババアだからさ。あのね、源氏名は昔から使っている小雪だから宜しくね」

六本木時代から彼女のことを知っている常連客は、彼女のことをKさんと呼ばずに小雪ちゃんと呼んでいるのは知っていた。

「ゲストとしてドンファン事件の関係者をゲストとして呼ぼうと思っているのよ。さっちゃんを筆頭にして、マコやん、そしてヨッシー(私のことだ)。マスコミは会いたがっているでしょ。協力してね」

 

冗談なのか本気なのか分からない。繰り返すが、はた目には不謹慎と思われるかもしれないが、彼女はこうした冗談が、社長への弔いになると思っているのだ。実際、彼女はこの後、社長の遺影が見つめる祭壇に手を合してこう漏らした。

「社長の大好きだった銀座でお店をやります。社長、応援して下さいね」

その表情は、さすがに寂しそうに見えた。

8月下旬、私はその銀座のお店に行ってみた。新橋駅から直ぐの8丁目のリクルート本社裏の雑居ビルにある、小さいが、流石に銀座のスナックだという気品がある。

「店名は変えないですよ。『岸川』でいきます。取材は受けますけれど、他のお客さんに迷惑にならない程度に、ですよ」

オーナーのママがそう言って微笑む。小雪ちゃんとは30年以上の付き合いらしい。

「銀座といってもババアがやっているお店ですから、ぼったくりもしませんし、お安くリーズナブルなお店です」

確かに、カラオケも置いてある庶民的なお店だ。

「若い時は歌手を目指していたんだから」 

事件の解明にはまだまだ時間がかかるだろう。それでも、当事者たちは「日常」に戻っていかなければならない。Kさんは必死に彼女なりの日常を取り戻そうとしているのだろう。

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