「紀州のドンファン事件」あの家政婦が、銀座のホステスになっていた

一体なぜ…?
吉田 隆

ふざけているわけではない

Kさんと「再会」する日の前日、8月14日の昼過ぎ。私は田辺の社長宅で、さっちゃんと、野崎社長の会社の番頭さんであるマコやんとテレビを見ていた。すると、偶然フジテレビ系列のワイドショーにKさんが録画出演している映像が流れた。

その前週にも彼女は、TBS系のワイドショーでインタビュー出演をしていた。インタビュアーはどちらも小川泰平という元刑事だ。あれだけ「犯人扱い」をされたのに、よくもまあテレビに出られるものだ、と驚いたものだ。それはさっちゃんも同じだったようで、

「信じられない。Kさんがまた出ている」

と、漏らしていた。そのワイドショー番組を見て、さっちゃんは突然Kさんに電話を掛けた。スピーカーホーンにしていたので、彼女の声はリビング中に丸聞こえだ。

「もうテレビ出演をしないっていっていたのにどうしたんですか?」

「ゴメンね。どうしてもって頼まれてさあ。私の無実を証明してあげるからとかなんとか甘いことばかりいうから、つい喋ったのよ。坂上忍さんが彼の番組で家政婦が怪しいとか言ったんで、それを訂正させるという約束だったのに、守んないんだから嫌になっちゃう」

Kさんは言い訳ばかりに終始していた。1時間近くもさっちゃんとKさんの会話が続いていた。Kさんはお盆に田辺に来る気満々だったが、

「絶対に帰ってくるな」

と、親戚たちから釘を刺されたらしい。

「それでも決めた。明日、田辺に飛んで行くから」

15日の朝の便で、Kさんは白浜空港に降り立った。それを車で迎えに行ったのはさっちゃんだった。

「本当にお久しぶり」

リビングで待っていた私とマコやんに笑顔を見せて、彼女は遺影・遺骨と向き合って手を合わせた。

その後、私、さっちゃん、まこやんとKさんの4人で雑談をしていたのが、話題はKさんが宣言した銀座のスナックの話になった。

「そりゃあ、凄いことですね」

とみんな驚いたが、

「まだ店名を決めていないけど、『銀座のドン・ファン』という名前はどうかな?」

という発言に二度驚く。彼女はふざけているわけではない。社長はとにかく冗談の好きな人だったから、こうして冗談をいうのが一番の弔いだと思っているのだろう。