脳にチップを埋めた兵士出現…「サイボーグ化」技術はここまで進んだ

「バイオハッキング」が拍車をかける
塚越 健司 プロフィール

BMIに関連して、他にも有名なものでは、電気自動車「テスラ・モーターズ」のCEOで有名なイーロン・マスクが2016年に設立した「ニューラリンク」という企業がある。

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ニューラリンクはBMI技術を追求する企業で、将来的に人間同士のテレパシーを、コンピュータを介して実現することを目指すという。技術の詳細は不明であり、にわかには信じられない話ではあるが、こうしたスタートアップ企業が実際に存在する。

 

「DIYサイボーグ」も現れた

侵襲的な技術は非侵襲なものに比べて危険を伴う。とくに脳へのチップ挿入は高度な医学的処置が必要であり、民間では技術的にも法的にも困難である(民間の頭部手術は、医学ではなく危害を加える行為とみなされるからだ)。

そこで民間からは、手にチップを埋め込むといった方法でサイボーグ化を目指す動きもある。

マイクロチップを埋め込む試みとしては、2017年にアメリカの自動販売機会社が、作業員の手にマイクロチップを埋め込むことで、クレジットカードなしに飲み物や軽食を買うことを可能にした。親指と人差し指の間に埋め込まれたマイクロチップをリーダーに読み取らせることで、支払いができるのである。

またチップを埋め込んだり、遺伝子技術を自分の体で試そうとする「バイオハッカー」と呼ばれる人々にも、近年注目が集まっている。バイオハッカーは自分の身体を操作することで能力拡張を目指す、主に民間人を指す言葉として用いられている。

例えば2017年には、交通系ICカード(日本でいえばSUICAやICOCA)のチップを手に埋め込み、ICカードなしに手をかざすことで電車に乗ろうとした人物が話題になった。

他にも遺伝子編集技術「クリスパー」を用いて、ヘルペス治療を目的としたDIY遺伝子治療薬を自分に注射し、その模様をネット中継したバイオハッカーなども現れている。現状では治療的な要素が強いが、遺伝子操作を民間で行うことで、(可能かどうかは別にせよ)腕力を強化するようなバイオハッカーが現れても不思議ではない。

米食品医薬品局(FDA)は、遺伝子治療薬の販売にはFDAの許可が必要であるとしてバイオハッカー達に警告を行っているが、自分の体をいじることに対する法的規制は困難なことから、現状では取り締まりは行われていない。

他にも「Grinder」と呼ばれる過激なバイオハッカーたちは、磁石を手に埋め込むことで新しい感覚を手にする他、体内をモニタリングする様々なセンサーを埋め込んで自分の状態をより深く知ろうとする。Grinderを取材した写真家は彼らを「DIYサイボーグ」と呼んでいるが、その活動は現状において大きな影響力を持ち得ていないとも述べている。