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脳にチップを埋めた兵士出現…「サイボーグ化」技術はここまで進んだ

「バイオハッキング」が拍車をかける

兵士の脳にチップを埋め込む研究

米国防総省の研究機関であるDARPA(国防高等研究計画局)のある研究が注目を集めている。

兵士の脳にチップを埋め込み、コンピュータと接続させることで能力アップを目指すというものだ。

脳に埋め込まれたチップを介してコンピュータと接続する技術は「BMI(ブレイン・マシーン・インターフェイス)」」と呼ばれる。

これを義手、義足などのパーツと組み合わせ、映画『スター・ウォーズ』の主人公ルーク・スカイウォーカーのように、義手を生身の身体であるかのように利用可能にすることをDARPAは目指しており、4年間で最大6000万ドルの研究資金の投入が計画されている

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またDARPAでは、脳にチップを埋め込み脳内の電気信号をモニタリングし、必要に応じて電気を流すことでPTSDの治療を行うプロジェクトもある(あくまで治療目的であり、治療完了後はチップを引き抜く)。

こうした研究に見られるように、昨今の最新技術には驚きを禁じ得ない。毎日のように報道される人工知能に限らず、遺伝子操作を始めとしたバイオ技術の中には、我々の予想もしなかったような研究結果が現れている。

 

本稿はその中でも、身体を操作することで能力拡張を目指す、サイボーグ化について考察する。上記の研究もそうしたサイボーグ化の一つの事例と言える。 

能力拡張はこれまで、対象者の身体の周辺の環境を拡張するものが多かった。例えば顕微鏡は、人間の身体能力では不可能な微生物の観察を可能にする。他にもメガネのように人間の能力を補強するものなどもある。基本的に人類は身近な環境を整備することで、その能力を拡張してきたと言えるだろう。

能力拡張には2種類の方法がある。一つは「非侵襲的」と呼ばれるもので、脳波を測定する装置を装着することによって、脳に直接メスを入れることのなく能力を拡張する方法である。装置から電流を流すことで学習効率をアップさせるものや、脳波だけでドローンを操作するものなどがある。

もう一つは「侵襲的」と呼ばれるものだ。身体そのものに器具等を埋め込むタイプの能力拡張で、この方法を用いたサイボーグ化技術が近年注目を集めている。

民間人が自らの身体を操作し能力拡張を目指す「バイオハッキング」や、治療を超えて兵士の能力を強化する軍事研究、さらにイルカやバッタなど、動物や昆虫をサイボーグ化する技術は、その対象・範囲ともに大きな広がりをみせている。

本稿はサイボーグについて、様々な観点から考察していきたい。

サイボーグの軍事利用

サイボーグ技術は、前述のDARPAに象徴される通り、まずもって軍事技術への応用が考えられている。

DARPAの試みは、インターネットの誕生が軍事技術から派生した歴史を思い起こさせる。軍事技術は民間転用され、チップを埋め込んだサイボーグ技術が、そう遠くない時代に当たり前となる時代が到来する可能性は十分にある。

インターネットやSNSをすでに我々が手放せないように、善悪にかかわらず技術発展は我々の社会に無意識のうちに浸透するからだ。パソコンなしにインターネットを可能にしたスマホのように、技術が向上すれば、サイボーグ化は思ったよりも安全で手軽な能力拡張手段となり得るかもしれない。