災害予測やAIが候補にならない…「ノーベル賞」は時代遅れか

「人類への偉大な貢献」が対象のはずが
佐藤 健太郎 プロフィール

受賞者は神様ではない

現代では、たった一人で研究を行なっているケースはほとんどない。研究室の指導者の下、チームを組んで分担して研究に当たることが普通だ。この場合、誰が最も貢献したかが問題になる。

たとえば2010年の化学賞「クロスカップリング反応の発見」は、リチャード・ヘック、根岸英一、鈴木章の三氏が受賞したが、正直言ってすっきりしない結果だった。もちろん三氏の業績を否定するものではないが、枠組みが不明確であったこと、また三氏に劣らぬほど重要な貢献をした研究者が多かったためだ。

特に日本の場合、ひとつの研究室に教授・准教授・助教と複数の教員がおり、それぞれが異なる研究テーマを持っているケースも多い。しかしこうしたシステムは海外からはわかりにくく、たとえ准教授が主体となっているテーマでも、ボスの教授のみが評価されてしまうケースがある。

クロスカップリング反応の場合では、研究当時には助手(現在の助教)であった玉尾皓平、宮浦憲夫両氏の寄与も大きかったが、残念ながら受賞を逸してしまった。

 

こうした多くの貢献者から無理矢理に3人だけを選出し、大きく顕彰するのが現在のノーベル賞だ。受賞者と落選者にはあまりにもはっきりとした線が引かれ、その後の人生には天と地ほどの差が生じる。この状況は、果たして是とすべきだろうか。

現代の科学の状況を見る時、一部門3名という枠は、ノーベル賞受賞者の希少性を保ち、賞の権威を高めるという以上の意味はないと思える。そろそろこの枠を拡大あるいは撤廃するか、平和賞のように団体に対する授賞を検討すべき時が来ているのではないだろうか。

また見ている我々の側も、ノーベル賞受賞者だけを過度に崇め奉ることのないよう、改めて自戒すべきだろう。現代の科学は一握りの神様のような研究者によって成り立っているのではなく、多くの無名のヒーローたちによって進歩を続けているのだ。

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