災害予測やAIが候補にならない…「ノーベル賞」は時代遅れか

「人類への偉大な貢献」が対象のはずが
佐藤 健太郎 プロフィール

「Webの父」も爪弾きに

人類に大きな貢献をしていながら、受賞対象から洩れているジャンルの最たるものは、いわゆる情報科学の分野だろう。インターネットはこの二十数年の間に我々の暮らしにしっかりと定着し、なくてはならないものとなった。

ソフトウェア技術、情報通信システム、それを支える暗号化技術などの研究が、その普及には不可欠であった。しかしこれら情報科学の分野は、ノーベルの時代には影も形もなかったがゆえに、世界最高権威の賞から全くの爪弾きにされている。

近年最も熱い注目を集めているAI(人工知能)の分野も、当然授賞対象からは外れる。将来、AIによって画期的な超電導材料や抗がん剤が開発された場合、その開発者が物理学賞や生理学・医学賞を受ける可能性はあるだろう。

だが、純然たるAIの研究は、現状のノーベル賞の枠ではどうしてもすくい取れない。「AlphaGO」開発者のデミス・ハサビスなど、世界に最も重要な変革をもたらしている天才たちが、最初から埒外というのでは賞の方向性が偏向しているといわれてもやむを得まい。

「AlphaGO」開発者が受賞する可能性は極めて低い Photo by Gettyimages

国際科学技術財団が主催する「日本国際賞」は、「Webの父」と呼ばれるティム・バーナーズ=リー、世界で広く使われるOSであるUNIXの開発者ケン・トンプソンとデニス・リッチーなど、コンピュータ科学者に対して積極的に賞を授与している。棲み分けを目指したということでもあるだろうが、ノーベル賞の授賞方針への批判と捉えることもできそうだ。

ノーベル賞の自然科学三賞には、1部門につき3人までという壁もある。これも開始以来一貫したルールで、同じチームで共同研究してきた者が共に受賞することもあるし、ライバルとして切磋琢磨してきた研究者が並んで顕彰を受ける場合も多い。

受賞者は、初期に比べて増加傾向にある。化学賞を例に取れば、1901年の第1回から30年の間は、受賞者は合計で28人に過ぎない(単独授賞が24回、2人授賞が2回、3人授賞ゼロ、該当者なしが4回)。

しかし21世紀に入ってからは、単独授賞はわずか3回しかなく、17年間で43人もの受賞者が生まれている。物理学賞、生理学・医学賞でも、この傾向はほぼ同じだ。

 

共同受賞が増えている背景には、研究者人口の増加による競争の激化がある。情報の伝播が速くなり、優れた実験装置なども普及しているため、一人の研究者だけが突出した成果を挙げることが難しくなったのだ。

また、学問の深化と細分化が進んでいる現在では、多くの研究者がアイディアを投入し、少しずつ進歩させていくことで、ようやくひとつの技術が完成する。たったひとりの画期的なアイディアによって、物事が大きく動いた20世紀初頭とは、状況が全く異なっているのだ。

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