photo by iStock

災害予測やAIが候補にならない…「ノーベル賞」は時代遅れか

「人類への偉大な貢献」が対象のはずが

設立から120年、時代に合わなくなってきた

科学界にとって、10月初旬にやってくるノーベル賞ウィークは、年に一度のお祭だ。今年は10月1日の生理学・医学賞を皮切りに、物理学賞、化学賞、平和賞、経済学賞が発表される予定だ(文学賞に関しては2018年は見送り、代わりに今年限りの新しい文学賞が発表される)。

賞金額だけでいうなら、ノーベル賞を上回る賞がいくつも現れている。しかし、ノーベル賞の権威と話題性、注目度はやはり段違いだ。

長い伝統と厳格な審査体制は、他の賞の及ぶところではない。研究者なら誰もが夢見る、科学界の最高権威の座は、当分揺らぐことはないだろう。

2017年は日本人からの受賞はなかったが、日系イギリス人のカズオ・イシグロ氏が文学賞を受賞した Photo by Getty Images

しかし、賞の開始から120年近い歳月を経て、現代の科学は大きく様変わりしている。その中で、ノーベル賞は時代にそぐわなくなっている面もあるのではないだろうか。

ノーベル賞は、開始以来大きな枠組みの変更はなく、当初のシステムをほぼそのままの形で引き継いできている。

唯一の大きな変化は、1968年にノーベル経済学賞が新設されたことだが、ノーベル賞のウェブサイトでは「経済学賞はノーベル賞ではない」とされており、あくまで似て非なるものであるというスタンスをとっている。

物理学賞、化学賞、生理学・医学賞の「自然科学三賞」は、開始以来全く不動だ。これらの他に新部門を増設する提案は外部から何度もなされてきたが、ノーベル財団は決してこれを受け付けなかった。

ノーベル賞の100年」(馬場錬成著、中公新書)によれば、財団はノーベルの遺言を厳密に守ろうとする意志が非常に強く、今後も新部門増設の可能性はないだろうという。

 

災害予測や温暖化対策も対象外

しかし、自然科学において、この3部門制は現在も妥当といえるだろうか。アルフレッド・ノーベルの遺言では、「前年に人類のために最も偉大な貢献をした人に」賞を与えるとしている。

だが、学問の枠組みはノーベルの時代から大きく変わっており、偉大な貢献をした自然科学の研究者が、賞の対象から外れる事態が多く起きている。

当初から指摘されているのは、ノーベル賞には数学賞がないことだ。当然ながら、数学は直接間接に、大いに人類に貢献している。素粒子理論から金融工学まであらゆる科学分野が数学を基礎として成り立っているし、特に統計学は強力な武器だ。近年流行りのビッグデータ解析なども数学の範疇に入る分野だが、ノーベル賞には縁がない。

地球科学もまた立派な自然科学の一分野だが、ノーベル賞の対象には入っていない。自然災害や地球温暖化(気候変動)などの予測と対策は、まさしく「人類への偉大な貢献」に他ならないが、その研究者が受賞した例は皆無だ。

(これらの分野は自然科学三賞よりも、平和賞の方が可能性があるかもしれない。平和賞は、環境問題への取り組みを行なった者も対象としているからだ。「ノーベル平和・環境賞」とでも名を改めた方がすっきりするように思える)