いまの政権と民主党政権の、官僚制をめぐる「意外な共通点」

改革された制度はうまく動いているか
牧原 出 プロフィール

『崩れる政治を立て直す』は、まず、これまでの様々な改革についての言説の中から、制度の作動について叙述した箇所を可能な限り拾い集める。従来、こうした言説は注目されてこなかった。よく知られた文献ですら制度の作動についてのくだりは全くと言ってよいほど関心を持たれていない。したがって、そうした文献から制度の作動に対する観察記録を抽出するのである。

次に、これらの観察記録から、制度の作動の過程を全体としてとらえ、歴史のダイナミズムの中で把握する。行政改革は行政の自己改革能力の改革であった。制度改革は、制度の自己作動能力の改革なのである。ルーマンの命題をそう拡張することによって、政と官のあり方を考えてみたい。

そして、制度を外から変える改革という視角から見ると、政の側は政党にせよ、国会にせよ、政党自身の改革によって、国会は両院の合意によって変わる以外にない。その点で、これらの改革は、制度の自己作動能力の自己改革である。だからこそ、実際には改革が極めて困難であり、その結果も諸勢力の妥協の産物となる。

これに対して、官については、行政改革すなわち官僚制の改革として、政治の側からの衝撃によって変化が生じてきた。つまり、自己改革能力への外からの改革であった。外からの刺激で変わりうる官は、政よりも改革を始めるのは容易であり、事例が多い分失敗も生じやすい。

 

『崩れる政治を立て直す』は、行政改革を対象とすることによって政と官の関係を、政による官の改革がどう作動したのかという観点からとらえていく。

まず第1章で制度が作動しない問題とは何かを説明する。そして第2章で今何が問題なのかという問いを、「何が作動しているのか」「何が作動しなくなったのか」という問いに読みかえて、公文書の改竄や、官僚の「忖度」といった問題を解きほぐす。

第3章以下は、自民党長期政権、小泉純一郎政権、民主党政権と過去から順に直近の政権まで振り返り、制度の作動状況についてその成功と失敗の原因を考える。第6章では、これらの制度の作動の観察記録を俯瞰しながら、今後どのようにすれば安定的な政府の制度設計があり得るかを考えていくことにしたい。

なお、『崩れる政治を立て直す』では、2001年の省庁再編前の中央省庁を呼ぶときは「省庁」とするが、この省庁再編後については、原則として政治家が長官となる庁が廃止されたため、政府内の呼称にならって「府省」と呼ぶことにする。

また、2001年の省庁再編前は一連の内閣をそのまま「内閣」と呼ぶが、2001年の省庁再編後に本格政権を組織した小泉純一郎政権以後は「官邸主導」が強化された内閣という意味で「政権」を用いる。

⑴ マックス・ウェーバー『支配の社会学ⅠⅡ』創文社、一九六〇年、一九六二年。
⑵ このような現状を総体としてとらえたものとして、デヴィッド・グレーバー『官僚制のユートピア』以文社、二〇一七年。
⑶ Niklas Luhmann, Politische Planung, 2. Auflage (Westdeutscher Verlag, 1975): 187.

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