「世界一ギャンブル依存症が多い」この国でカジノが失敗する理由

IRは、カジノの破綻を見越して造れ
河合 莞爾 プロフィール

日本人には、カジノのゴージャスさは無理

実は私は、パチンコ・パチスロの存在以外にも、日本カジノが失敗する要因はいくつもあると思っている。

まず、「カジノはもはや、世界的に飽和状態」だと言われている。特に2014年以降、アメリカでは現大統領・トランプ氏の運営会社を含めてカジノの倒産が増加し、マカオやシンガポールも売上を減らしているという。もう世界的に「カジノさえ作れば金がじゃぶじゃぶ入る」という時代ではなくなったのだ。

次に、日本には「行政主導で開発した案件は失敗する」という経験則がある。原因は明らかだ。企業に舐められて法外な費用を払わされ、事業が赤字になると行政が資金、つまり税金をどんどん投入するから、いつまでたっても事業として自立しないのだ。今回のカジノには、行政は資本参加はしないというが、果たしていつまで辛抱できるだろうか。

そして最大のポイントは、日本は良くいえば「質素」な、悪く言えば「貧乏臭い」国だということだ。日本人が海外のカジノに行くのは、日本では味わえないゴージャスさを味わうためだろう。では、日本でそれが再現できるだろうか? 私はできないと思う。海外ではどんなにお洒落な文化でも、日本に持って来た途端、貧乏臭いものになってしまうからだ。

いい例がゴルフだ。発祥地のイギリスをはじめとして欧米では紳士のスポーツだし、アジアの高級リゾートにあれば優雅なレジャーだ。しかし、これを日本に持ってくると「ナイスちょっと」「三浦届かず」「あわや乗り子」「やっちまった商店街」などの駄洒落が飛び交い、いきなり庶民感満載になってしまう。

競馬もそうだ。欧米ではセレブが正装で嗜むレジャーのはずなのだが、日本では「道端」「煙草」「耳に赤鉛筆」「缶チューハイ」「予想屋」「ノミ屋」「演歌」「オケラ街道」といったメージがつきまとう。

そして、日本人が無理やり何かをゴージャスにしようとすると、必ずヘンなものになってしまう。デコトラや痛車、巨大温泉旅館や銀座のクラブや秘宝館やロボットのいるレストランを思い出してほしい。悲しいかな、これが日本のゴージャスだ。

カジノだけが、日本に来ても海外と変わらずゴージャスなままでいられるだろうか。そんなはずがない。日本のカジノでは、「幸運の女神は、今夜は微笑まなかったみたいだね」などという台詞が囁かれることを期待してはいけない。隣のオジサンに「あ~あ、もうウチ帰ってイモ食って屁ェこいて寝よ!」というボヤキを聞かされるのが関の山だ。

東京湾や大阪湾にこんなゴージャスなホテルが並ぶ日は来るのか(photo by istock)

万が一、パチンコ・パチスロがなくなったとしても、日本のカジノでは以上のように不利な条件が揃っている。誘致した国も意地になって、できる限り続けようとして、その間に莫大な税金を投入することだろう。しかし、いつか必ずカジノは破綻すると思う。

だから日本の「カジノを含むIR」は、「カジノの破綻後にどうするのか」を見越して作っておいたほうがいい。

「カジノによらない統合型リゾート」とは

では、カジノが破綻したあと、日本は何を中心としてIRを維持すればいいのか。オンリーワン・ビジネス、つまり「日本にしかないIR」でなければならない。そう考えれば、日本にはすでに、日本にしかないIRが存在している。それは「京都」だ。

京都は、日本に行かないと味わえない「京都という名のIR」だ。四方を自然に囲まれており、春には桜が咲き乱れ、秋には紅葉が舞い踊る。到るところに神社仏閣という観光スポットが有り、老舗の料亭や京野菜を使ったフレンチ・イタリアンの名店があり、夜にはつてがあればお茶屋での芸者遊びが楽しめるし、町家を改造したお洒落なバーもある。長期滞在には、由緒正しい日本旅館がある。

日本型IRは京都のように、日本に行かないと体験できない「世界オンリーワン」のIRにするべきだ。では、一体どんなIRを作ればいいのか。

私は、日本型IRは「漫画・アニメ・ゲームを含むIR」しかないと思う。

フィギュアスケートのメドベージェワ選手がセーラームーンのコスプレを行い、『スラムダンク』に描かれた踏切りを見に世界中から若者が集まる、それが日本のキャラクター力だ。京都が日本の歴史資産だとすると、漫画・アニメ・ゲームのキャラクターこそが、日本の現代資産なのだ。

カジノなきあと、IRの中心は、ディズニーランドのような「日本製キャラクターのテーマパーク」にするのだ。日本のあらゆる出版社やアニメ・ゲーム会社が協力し、『進撃の巨人』と『ONE PIECE』と『ドラえもん』のアトラクションが勢揃いすれば、世界でも類を見ないアミューズメント・パークができるだろう。

このIRは、カジノでは相手にされない子供たちにもアピールするだろう。かれらはIRを起点に、日本の隅々へと「聖地巡礼の旅」に出かけるだろう。そして子供たちが自国へ帰り、日本の素晴らしさを喧伝するだろう。子供の頃から日本文化に慣れ親しんだ世代は、きっと成長しても日本という国が好きになるだろう。これは将来、防衛問題においても大きな戦争抑止力となるだろう。

かつて民主党政権時、事業仕分けによって「国営漫画喫茶」という中傷とともに「国立メディア芸術総合センター」計画が廃止された。これができていたら、今頃は国内外、全世界の日本漫画・アニメ・ゲームファンにとっての「聖地」になっていただろう。

しかし、まだ遅くはない。カジノが潰れた時のために、今から準備しておこうではないか。

 
 
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