「世界一ギャンブル依存症が多い」この国でカジノが失敗する理由

IRは、カジノの破綻を見越して造れ
河合 莞爾 プロフィール

日本にカジノを作る意義があるとしたら、一つだけ

ところで私は、今も日本でのカジノ開業には反対だ。理由は明快で、日本では賭博は犯罪だからだ。

刑法第185条(賭博罪)
 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。(後略)
刑法第186条2項 賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図ったものは、3月以上5年以下の懲役に処する。
賭博行為は(中略)国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲法二七条一項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し、又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである。(最高裁判所大法廷判例・昭和25年11月22日・刑集4巻11号2380頁より抜粋)

なぜ賭博は犯罪なのか。それは賭博が麻薬と同じく依存症を引き起こす「依存ビジネス」だからだ。一度依存してしまえば二度と抜けられず、死ぬまで金を吸い取られ続ける、これが依存ビジネスだ。

依存ビジネスは反社会的集団のシノギであって、国民を守るべき国が金儲けのためにやっていいはずがない。諸外国もやっているからというのは理由にならない。しかし、日本は賭博を合法化することになった。かつては覚醒剤も国が合法と定めて堂々と売られていた。再びそれと同じことが繰り返されることになった。

 白竜はまた、グラスを口に運んだ。
「酒や煙草を見てみろ。世界中で毎年何百万人も死んでる。でも、どの国だってそんくれえの死人だったら禁止にはしねえ。税金がどかどか入るからな。ヤクザが売れば中毒物質だが、お上のお墨付きがあれば嗜好品って訳だ。ギャンブルもそうだろ? ヤクザがやれば賭博開帳、お上がやればレジャー施設だ」
(河合莞爾著・祥伝社『スノウ・エンジェル』より)

日本カジノはパチンコ・パチスロに勝てない

しかし。それでも私は、今回のカジノ解禁に一つの希望を見ている。それは「カジノ解禁が、パチンコ・パチスロ廃絶の最後のチャンス」となるかもしれないからだ。

皆様はご存じだろうか。日本にカジノはまだ影も形もないのだが、日本は現在でも、すでに「世界有数のギャンブル大国」で「世界一ギャンブル依存症の多い国」らしいのだ。

「ギャンブル依存 536万人 厚労省統計」
成人の依存症について調べている厚生労働省の研究班(研究代表者=樋口進・久里浜医療センター院長)は20日、パチンコや競馬などギャンブル依存の人が成人人口の4.8%に当たる536万人に上るとの推計を初めて発表した。
研究班は昨年7月、成人約4000人に面接調査を実施した。その結果、ギャンブルについては、国際的に使われる指標で「病的ギャンブラー」(依存症)に当たる人が男性の8.7%、女性の1.8%だった。海外の同様の調査では、米国(02年)1.58%▽香港(01年)1.8%▽韓国(06年)0.8%――などで、日本は際立って高い。
研究班の尾崎米厚・鳥取大教授(環境予防医学)は「パチンコなど身近なギャンブルが、全国どこにでもあることが海外より率が高い原因ではないか」と分析する。
(毎日新聞2014年8月21日記事より、抜粋の上引用)

この新聞記事を読んで、違和感を持たれた方もおられるかもしれない。そう、日本の法律上パチンコ・パチスロは「遊技」であってギャンブルではない。それなのに上記の記事では、厚労省も、新聞も、医療機関も、国立大学も、みんなでよってたかって「パチンコはギャンブルだ」と断言している。まことにけしからんことだ。

世界を見渡しても、パチンコ・パチスロほど身近なギャンブルはない

しかし、どうやら国際的にも、パチンコ機・パチスロ機は「ギャンブル用電子的ゲーム機械(EGM=Electric Gaming Machine)」だと見られているようだ。その前提に立つと、全世界のギャンブル機の約60%が日本に存在することになる。だから日本は「世界有数のギャンブル大国」で、「世界一ギャンブル依存症の多い国」なのだ。

「各国におけるEGMの設置台数」
順位 国名 EGMの台数
1 日本 4.592.036
2 アメリカ 889.070
3 イタリア 412.252
4 ドイツ 265.000
5 スペイン 249.820
6 オーストラリア 198.418
7 イギリス 157.002
8 カナダ 97.289
9 メキシコ 90.000
10 ペルー 76.278

(The World Count of Gaming Machines 2013より)

国内外でここまで言われたらしょうがない。私も、こころならずも「パチンコ・パチスロはギャンブル」という前提で話を進めることにする。さて、パチンコ・パチスロ店を「既存のカジノ」と定義するならば、カジノ開業前の現在でも、すでに日本には3兆6300億円のカジノ市場が存在することになる。

カジノゲーミング市場規模
順位 地域 総額(2013年推定)
1 北米 7兆1.858億円
2 マカオ 4兆5.000億円
3 日本 ※3兆6.300億円
4 欧州 7.500億円
5 シンガポール 6.000億円
6 オーストラリア 3.500億円
7 韓国 2.700億円

(海外は各社開示資料よりキャピタル&イノベーション株式会社調べ。日本はパチンコ・パチスロの市場規模。キャピタル&イノベーション株式会社調べ)

この表から、日本は現在すでに北米・マカオに次ぐ世界第3位のカジノ大国であることがわかる。見ての通り、ヨーロッパ全体の5倍近い規模だ。

加えて特記しておきたいのは、海外のカジノは国外からの観光客による売上が3分の1~2分の1を占めるのに対し、日本のカジノ(パチンコ・パチスロ)3兆6300億円は「ほぼ日本居住者だけ」で成立していることだ。

※「日本のパチンコ・パチスロ市場は20兆円規模」なる数字を目にした方がおられるかもしれない。これは「レジャー白書」(公益財団法人日本生産性本部)で年度別売上として挙げている数字で、内容は「玉やメダルを貸した金額」だ。だが、カジノを代表とする世界のゲーミング産業では、プレイヤーが投じた金額から獲得した金額を引いたもの、つまり「GGR(Gross Gaming Revenue)=粗利」を売上高とするのが一般的なので、3兆6300億円が信頼できる数字と言えそうだ。

私は、日本カジノはパチンコ・パチスロには勝てないと思う。日本には戦後から70年以上にわたってパチンコ・パチスロが存在する。これが日本のギャンブル事情における、世界に類を見ない特異性だ。マカオ、シンガポールのカジノが成功したのは、そこにパチンコ・パチスロがないからではないのか。韓国に至っては、カジノは合法なのにパチンコ・パチスロは禁止だ。これが何を意味するはすぐわかるだろう。

海外からの観光客だけでカジノが維持できるとは、まさか国も思っていないだろう。カジノを中心としたIRを成功させるためには、日本全国に1万596店舗(2017年、全日本遊技事業協同組合連合会発表)を持ち、3兆6300億円ものカジノ市場を独占しているパチンコ・パチスロに手を付けるしかないのではないか。

また国は、完全なギャンブルであるカジノ開業を機に、パチンコ・パチスロという事実上のカジノに法的整合性を持たせるべきではないのか。そして、国民をギャンブル依存から守るために、パチンコ・パチスロに対して今こそ「結論を出す」べきではないのか。

カジノ解禁が、パチンコ・パチスロ廃絶の最後のチャンスとなるかもしれない。繰り返すが私は、そこに一縷の望みを抱いている。