野田聖子氏と河合雅司氏(撮影/島﨑信一)

女性が子どもを産まないのは、静かなストライキかもしれない

すべての職場で半分を女性に
全国の自治体を統括する総務大臣、そして女性活躍担当大臣を兼務する野田聖子氏と、累計73万部超のベストセラー『未来の年表』シリーズ著者・河合雅司氏が、地方創生政策と少子化対策を徹底検証した――今月発売されたばかりの『地域人』第37号(大正大学地域構想研究所編、大正大学出版会刊)から、ふたりの対談を特別に紹介する前編

不都合な真実は使うな

――安倍内閣が進める「まち・ひと・しごと創生総合戦略」5カ年計画が4年目に入り、『地域人』は創刊3周年を迎えます。その記念として、今日はこれまでの地方創生政策の成果と今後の課題、中でも少子化対策について、お話をうかがえればと思います。

河合 残念ながら、日本の少子化は止まりません。子どもを産むことのできる年齢の女性が激減するためです。一方で、しばらく高齢者数は増えていきます。私は団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年頃が日本の大きなピンチを迎える時期になると思います。

その頃の社会がどうなっているのかを分析することなく、対策をとることなどできるはずがありません。そうした意味では、野田総務大臣のリーダーシップのもと、私もお手伝いした「自治体戦略2040構想研究会」や「未来をつかむTECH戦略構想」などで、2040年をにらんだ対策をまとめたことの意味は大きいと思います。

ここで問題となるのは、日本全体で一律に人口が減少するわけではない点です。今後は、地域による差がより大きくなると思います。東京の都心部のように2045年になっても人口が3割増えると予想される所もあれば、すでに人口が減り、どうやってやりくりするのか頭を悩ませている自治体もあります。

我々はこの問題をどのようにとらえればいいのかを考えなければなりません。

 

野田 子どもを産み育てる側の性である女性として、少子化問題は長年私の政治課題でした。少子化にともない人口が減少することで、今までできたことができなくなっていく。

過去の制度や法律に付け足していくだけでは追いつかなくなって、結局、次世代にとんでもない重荷を負わせることになるという問題意識をずっと持っていました。

実は20年前、郵政大臣になったとき、当時の小渕恵三総理に「このままでは危機的な状況になる」と申し上げて、「少子化対策関係閣僚会議」を立ち上げていただいたんです。

でもその時は「あなたが子どもを産めばいいじゃないか」とマジメに言う議員がいるぐらい問題意識もなく、何とかしなければと本(『だれが未来を奪うのか― 少子化と闘う』)を出してもまったく売れない(笑)。

つまり少子化は「女子どもの問題」で、女性が子どもを産めば済むという意識。私は絶望的な気持ちになっていました。

河合先生もお使いになっている「日本の将来推計人口」のチャートがありますね。それを見ると、明治維新から100年で人口は9000万人増えたのに対し、これから100年で同じ9000万人減るという試算が出ています。

つまり人口が減って若い労働人口がいなくなるということですが、それは今までの政策が間違っていたと与党自民党の責任になってしまうので、不都合な真実は使うなと(笑)言われていました。

でも少しずつ使い始めていたら、先生の『未来の年表』がベストセラーになって。私の思っていたことを、男性がきちっと書いてくれて、救世主が現れたなと思いました。

河合 いやいや(笑)。

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過去の常識を否定する

野田 総務大臣になったとき、まずこれまでなかった「超中長期ビジョン」を作ろうとしたのですが、河合先生の本を参考にしてほしいと職員に配りました。「自治体戦略2040構想研究会」や「未来をつかむTECH戦略構想」も、根っこは人口減少が進むと大変なことになるという認識から出発しています。

河合 人口減少は避けられません。ならば減ることを前提として考えることです。人間というのは過去の成功体験にとらわれがちです。しかし、それではこれから先の社会を機能させていくことはできません。むしろ、過去の常識を一度否定してみることが重要なのです。

「自治体戦略2040構想研究会」は人口減少時代の基礎自治体の在り方を提言したわけですが、こうした取り組みをもっと広げていく必要がありますね。

野田 なぜ研究会を立ち上げたかというと、例えば全国の市長会に出席すると、一番人口が多いのは横浜市で370万人、一番少ないのは北海道の歌志内(うたしない)市で3000人です。これだけ違いがあるのに、政策のコンセンサスを得ることができるのかと疑問に思いました。

それで総務省の職員に都道府県、市町村という区分はなぜあるのか尋ねたら、明治時代に作られたものがそのまま手直しもなく来ていると。人口が増えれば村が町に、町が市にとなりますが、逆は全然ないんです。

人口が違えば環境もさまざま。自治体によっていろいろ事情が違うのに、決まった地域分けでしかものを考えてこなかったわけです。

もうひとつ、経済財政諮問会議などに出ると、東京の経済界の人たちは人口が少ない町村を福祉対象に見るわけです。地方にはポテンシャルがあるという意識がなく、甘えすぎ、頼りすぎだと厳しく言うのですが、それもずれている気がします。