「金農野球部と吉田輝星」魅力の秘密~秋田県出身ライターが解説

吉田投手のアカウントや言葉の意味は…
桜井 美貴子 プロフィール

「巨人に行きたいです」発言の真意

同じ東北でも、秋田は東日本大震災で被害を受けませんでした。そのぶん、「被災地」として日本中のマスコミが殺到した太平洋岸の福島、宮城、岩手三県と違って、マスコミずれしないでここまできました。そのぶん「マスコミ好きのマスコミ不慣れ」な県民性です。人なつこいとは決して言えず、自分の立ち位置をしっかり作ってからでないと打ち解けようとしない。ただ打ち解けると、おもしろいくらい脇が甘い。すれてなくて、話し好きで質問され好きです。さらにはひょうきんでサービス精神たっぷり。ウケるとうれしいというのも秋田の男ども。

いまに至るまで尾を引いている吉田君の例の問答がまさにそれです。

「好きな球団は?」と報道陣に聞かれ、「巨人です!」。
「行きたいですか?」と続けて聞かれたら、溌剌と「はい、行きたいです」。
メディアは飛びつき、高野連の大人たちはどよめきました。

これも秋田県民にとってはとてもめんこいリアクション。秋田の諸先輩たちは、「なして巨人だ!」「行げ、巨人!」と宴会のように盛り上がる。吉田くんの真意よりも、彼の発言に日本中が大騒ぎすることがとてもうれしい感じとでもいいましょうか。 

吉田君の真意はわかりませんが、「はい、行きたいです」と言ったとき、目にはきらっといたずらっ子の色が浮かんだような……。U-18の球場で持参した巨人のタオルを、報道陣のリクエストのままに広げて見せる目にも同様。

とにかく吉田君は、今をとても楽しんでいるのが伝わってきます。めんこいなあ。

金農野球部のベンチには「雑草軍団」とある 撮影/児玉大祐
 

「最終目標」は甲子園制覇ではなく…

冒頭の大川さんがこう言っていました。

「金農を知らない全国の人たちまで金農を応援してくれた。これは自分たちにとって喜びであり、誇らしい気持ちになりました。毎試合、二度と見られない100年目のミラクルだという気持ちで応援していました。何回も負けそうな試合はあったけれど、終盤で粘り勝ちしてきた。今日も祈る思いと信じる思いでした。

今、金農ナインに声をかけるとしたら、お疲れ様のひと言に尽きます。100年目のミラクルは秋田の街まで動かしました」

日本中からほとんど注目されることがなかった秋田に、日本の注目を集めてくれた金足農業。それで秋田の人たちはもう大満足です。

彼らのグラウンドのダッグアウトのボードには「最終目標 東北聖光 光星に勝てるチーム」とありました。「全国制覇」はさすがに彼らの「分」からははみ出してしまっていたのでしょう。

目指せ甲子園!でも全国制覇!でもなく、東北地区の強豪校「東北聖光・光星」の打倒を目指しているのもなかなかめんこい 撮影/児玉大祐
金農と吉田投手は、まさに「秋田だからこそ生まれた」人気者なのだ。吉田選手の「めんこい」魅力で、韓国戦の後もフィーバーはやみそうにない。

編集部注:現在、金足農業高校は無断で入って撮影する人が多くなり、撮影お断りの表示を載せていますが、このホワイトボード&ベンチの写真は、甲子園の決勝以前に学校側の許可を取って撮影しているものです。