堅調な景気回復と人手不足を背景に賃金上昇の兆しが見え始めたものの、中高年労働者においては所得環境改善の遅れが目立っている。
政府公表統計に基づき推計したところ、いまだに北海道の全世帯数に匹敵する約250万世帯がワーキングプアという現実に驚かされる。しかも、その4割が働き盛りとされる35歳から50歳代の中高年によって占められている。
彼らを現状のまま存置すれば、将来、老後資金の不足から生活に困窮する高齢者が大幅に増加し、これまで以上に医療・介護費や生活保護などの社会保障支出が増えることはあきらかである。
また、日本の厳しい財政状況を考えれば、社会保障サービスの抑制や消費税などの税率および社会保険料率の更なる引き上げなど、国民にそのツケが回ってくるばかりか、日本経済の持続的な成長の足かせともなりかねない。
初めに、中高年労働者の所得環境の実態を把握しておこう。まず、正社員・正職員の労働者(以下、正規雇用)では、他の年齢層に比べ、中高年の賃金の低迷が著しい。
特に、団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアが大半を占める40歳代は、50歳代に比べ実質的な賃金が低い。
賃金構造基本調査(厚生労働省)を基に試算したところ、大卒男子が40歳までに得た収入総額(所定内給与+賞与、2015年価格)は、バブル期入社の50歳代前半に比べ、団塊ジュニアで約450万円、ポスト団塊ジュニアで約750万円少ない。
次に、正規雇用以上に厳しい状況に置かれている契約社員や派遣社員など正社員・正職員以外の労働者(以下、非正規雇用)を見てみよう。
非正規雇用の場合、30歳以降では賃金が伸び悩み、年齢が上がるに従い正規雇用との格差が拡大する。2017年における非正規雇用の月額所定内給与(男女計)は、19歳以下では正規雇用との差は1万円程度だが、50~54歳では正規雇用の約半分の20万5000円に過ぎない。