最新調査で判明、インターネットはこうして社会を「分断」する

炎上商法の果て、穏健派は消えていく
辻 大介 プロフィール

昨年11月にウェブ調査を実施した目的は、このことを検証することにあった。もっとも、実際に想定していた影響のプロセスは、現在のネット研究における有力な仮説をふまえて、もう少し複雑なものだ。

ネットでは、自分の好みにあった情報や意見を見つけることが、マスメディアよりもはるかに容易にできる。ソーシャルメディアでも、同じような関心や考えをもった人たちが、つながっていきやすい。その結果、たとえば排外主義的な意識傾向をもった人は、排外主義的な情報や意見にくり返し接することになる。

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こうした同質的な情報のネットワーク——「エコーチェンバー(共鳴箱)」——の中では、自分の考えが世の中の多数派であるような世論の錯覚も生まれやすい。そのことが自分の考えの正しさへの確信を強める。また、より極端な意見ほど目立ち、拡散されやすいことで、エコーチェンバーの中の人たちの考えはますます極端に流されていく。

 

重要なのは、これと同型のプロセスが、アンチ排外主義的な意識をもつ人たちの側でも生じうることだ。それぞれのエコーチェンバーの中で、それぞれの意識・意見は反対方向に先鋭化していく。これをネットの「分極化 (bi-)polarization」効果仮説という。

ネット利用と排外主義には「因果関係」がある

それでは、調査データの分析結果はどうだったか。

ネットをよく利用すると、排外主義的な意識が強くなる一方で、アンチ排外主義的な意識も強くなる傾向が確認された。つまり、排外主義的になっていく人、反排外主義的になっていく人が両方とも現れるということだ。分極化効果を示唆する結果である。

専門家筋のために、ひと言断っておくと、そこで確認されたのは単なる相関関係ではない。ネット利用が原因となって、ユーザの意識がそれぞれ対立的な2方向に変化するという、因果関係である。分析方法と結果の詳細については、学術誌に掲載された論文を私のウェブサイトでも公開しているので、そちらをご覧いただきたい(「インターネット利用は人びとの排外意識を強めるか」)。

ネットの分極化効果は、メディア関連の研究者の間では世界的なホットトピックであり、現在、精力的に実験・調査研究が進められている。ただ、それらの結果は必ずしも一致をみていない。

日本での検証例はまだきわめて少ないが、たとえば、先ごろ知見の概要が公表された田中辰雄氏と浜屋敏氏の調査研究(「インターネットは社会を分断するのか?」)では、ネットが人びとの政治意識を右派(保守)方向と左派(リベラル)方向に分極化させるような傾向は認められなかったという。つまり、私の研究とは違って、分極化効果を否定する結果だ。

このように研究結果が分かれる理由のひとつに、私はまだ仮説段階ではあるが、ネットによって分極化がうながされる政治的イシューとそうでないイシューの違いがあるのではないか、と考えている。