「大卒就職率」の統計を取れないドイツ

日本にははっきりとした『既定路線』がある。高校を卒業して、大学を卒業して、就職をする。事実、高校を卒業して大学・短期大学に直接(現役で)進学したのは54.8%、大学生の就職率は98%という文部科学省の統計がある。

こういったメインストリームに乗れず、つらい思いをしている人もいるだろう。大学に受からず自暴自棄になってギャンブルにハマった人や、就活がうまくいかずに心身のバランスを崩してしまった人を知っている。

でもドイツでは、大学に行く前に世界一周旅行に行く人もいるし、大学に行きながら働く人もいるし、「やりたいことがわからない」とボランティアを経て就活する人もいる。大学の新入生の年齢は、20歳~30歳くらいまでバラバラだ。

ドイツでは、何歳で何をしていようが、そこにちゃんと意志があれば、基本的にだれも気にしない。だからみんな積極的に人生を模索するし、人生の迷子になっている人にも「いろいろやってみたらいいんじゃない?」と寛大だ。

『就職者の何%が大卒か』という統計はドイツにもあるが、『大学を卒業してストレートで就職した割合』という統計は見かけたことがない。みんな異なるタイミングで卒業して就職するから、そういう統計を出すのがむずかしいのだ。

そして本来、そういう統計が取れなくて当然なのだと思う。みんな、ちがうペースで生きているのだから。

「就活が嫌」で自分は何をしたのか

大学生のときは就活をして就職するのが当然だと思っていたし、それ以外の選択肢を知らなかった。そして「就活がイヤなら日本にはいられない」とドイツへ渡った。でも飛び出す前にもう少し、ほかの道がないか模索してみればよかったと、いまなら思える。

「就活がイヤだ」と言うほど、いろんな企業にコンタクトをとったのか? ネットでおもしろそうな企業を見つけて、採用担当者に会いに行こうとは思わなかったのか? スーツで働かなくてもいい企業だってあるはずだろう?

働き方や生き方には、無限の選択肢がある。自分にぴったりなものがなにひとつないなんて、なにもできることがないなんて、そんなバカなことがあるか。諦める前に、もっと探せばよかったんだ。

「日本で働いたら人生が詰む!」なんて思っていたけれど、なんの能力がなくとも内定がもらえ、社外に出なくともキャリアップできるというメリットだってある。せっかくならそういうメリットを使う方法を考えてもよかった。

ドイツに来たことを後悔はしていないが、見切りをつけるのが早すぎたかもしれない、とは思っている。

2021年に経団連が定めた就活ルールが廃止されることになると、翻弄される学生も多いだろう。そのとき、すぐに見切りをつけずさまざまな道を模索してほしいし、まわりの人は模索する若者を応援してあげてほしい。

人生、たいていのことはできる。失敗しても、挫折しても、そういったものを背負って一歩踏み出してみれば、案外道が拓けるものだ。

日本でもドイツでも就活がうまくいかなかった。大学を辞めた。バイトすらまともに勤まらなかった。そんな人間だってどうにかなっているのである。そう考えれば、いま下を向いている人の目の前にだってきっと、道があるはずだ。

「自分なんて……」と思っている人は、「こんな自分でもできることがある」と信じて、ぜひ模索してみてほしい。ふとしたキッカケで、人生には追い風が吹くのだから。

「なぜか、多くの日本人、それもドイツに住んだことがない人が、『ドイツ人と日本人は似ている』と言う。それは同じ敗戦国として、日本人が一方的にシンパシーを感じているいからだろう」――大学卒業後ドイツに移住した26歳の著者が、ドイツから漫画などの文化、教育、部活、恋愛、仕事、家族などのテーマで「日本が勝手にすごいと盛り上がっていることの温度差」や「日本で当然と思われていたり素晴らしいと思われていたりすることに対する疑問」などを冷静な視点で描いた一冊。