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ゲノム解析でわかった我々と絶滅人類との深い関係

7万年前、地上には5種類の人類がいた

DNAの解析速度は1000倍以上になった

いくらがんばっても敵わないものがある。

たとえば、東京から大阪まで行くのに、交通機関を使わなければ、何日もかかる。江戸時代の飛脚は、江戸から京都まで3~4日で走ったらしいが、これは何人かで交替した場合の話だ。1人なら、いくらがんばって走っても、1週間ぐらいはかかるだろう。ところが飛行機に乗れば、1時間ぐらいで着いてしまう。スピードにすれば、100倍以上だ。まるで勝負にならないのである。

飛脚の時代から飛行機の時代に変わるのには、だいたい100年ぐらいかかっている。100年で100倍になったのだ。これだってすごいことだが、最近もっとすごいことが起きた。21世紀初頭のたった数年で、1000倍以上になったものがある。それはDNAの塩基配列を読む速さだ。しかも、DNAの塩基配列を読む費用も、1万分の1以下になった。いわゆるゲノム革命が起きたのである。

【写真】速くなった塩基配列の解読
  たった数年で1000倍以上の速さになったのが、塩基配列の解読である photo by gettyimages

今までは少しずつ、ちょろちょろと流れていた水が、激流のように一気に川を下り落ち始めた。新たな発見があふれ出し、今までの古い説を押し流していく。そんな激流の真ん中にいる人物が、デイヴィッド・ライクだ。古代DNAによって人類の進化を研究しているハーバード大学の研究者である。そのライクが、今年(2018年)初めて一般向けの書物を著した。そしてその日本語訳が、早くも7月に発売された。『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(デイヴィッド・ライク著、日向やよい訳、NHK出版)だ。

これまでの古代DNAの研究は「飛脚の時代」だったが、この本にはゲノム革命後の「飛行機の時代」が描かれている。読んでいると、タイムマシンに乗って未来にやってきたような気分になる。

とにかくゲノム解析による圧倒的な情報量で、従来の説に攻め込んでくる迫力がすごい。その勢いのままに、興味深い話題が数多く展開されているが、ここでは「出アフリカ」に関する新しい説を紹介しよう。

人類は約700万年前にアフリカで誕生し、その後500万年以上のあいだ、アフリカの中だけで進化してきた。その後、人類の一部がアフリカを出て、世界中に広がった。この、人類がアフリカを出たイベントを、「出アフリカ」という。