アナリストの大半が「買い」推奨をしているのに、株価がその見立てを大きく下回って推移しているセクターがある。
三菱地所、三井不動産、住友不動産などが属する大手不動産デベロッパーセクターだ。
目下、都心の不動産価格はうなぎのぼり。7月末の東京オフィス空室率は2.58%と空前の低さ。賃料も上昇中。それを反映して、各社保有の不動産の含み益も毎年上昇を続けている。だから、アナリストたちは「買い」だと言うのだが、現実にはその株価は冴えない。
なかでも、「丸の内の大家」として圧倒的な存在感を誇る三菱地所の株価は、今年1月高値を付けて以来、いまだその水準を超えられずに低迷しているのだ。
いったい、なぜか。
確かに、不動産会社各社は、保有不動産の価値上昇で、多大な不動産含み益を有している。アナリストの評価は、こうした不動産含み益の量に基づいて計算されている。
しかし、含み益というのは、ある意味で「絵に描いた餅」であり、売却により顕在化させて初めて意味が出てくる概念である。
現に、企業価値を測るときには、会計上の利益のみならず、「キャッシュフロー」が重視されることが多い。キャッシュフローとは、どれくらいキャッシュを稼いだかという指標である。
その意味では、大手不動産会社の保有不動産の価値が毎年どんどん上昇していても、それを売却しなければ、含み益に相当するキャッシュは顕在化しない。そうであれば、いつまでたっても、正当な評価はなされないのである。
そう考えると、しかし、株価を引き上げるのはそれほど難しいことではない。彼らが保有する優良不動産の「一部」でいいから、売却すればいいのだ。それにより、デベロッパーは、含み益に本当の価値があることが証明できるし、売却額に相当するキャッシュを獲得できてキャッシュフローを改善できるのだ。
実際、最近こうした不動産株の含み益が顕在化された事例が発生した。東京センチュリーが、神戸製鋼子会社の神鋼不動産株の7割を取得した案件だ。