倍率50倍…!色々あっても医学部が異常な人気を維持し続けるワケ

合格率は7%
原田 広幸 プロフィール

医学部が人気になったきっかけは

医学部人気が過熱する契機は、2007年にまでさかのぼる。その年、2007年に日本中で問題となったのは「妊婦たらい回し」事件である。

これは、その前年の2006年、奈良県の病院の産婦人科で出産中の妊婦が激しい頭痛と嘔吐の上で意識不明となり、高次医療機関への救急搬送が行われたが、19病院に断られた事件。意識不明から約6時間後に受け入れられ、脳外科手術が行われたが、妊婦は死亡。その後、日本中で「医療崩壊」の実態が明らかにされていった。

これが契機となり、当時の舛添要一厚生労働大臣は、それまでの政府の公式見解を180度転換し、「医師が不足している」との認識を示した。

これにより、2008年には7625人だった全国医学部の定員が漸次増加されていき、2年後の2010年には1000人以上多い8846人となった(現在は9,419人)。医師への道が政府公認で推奨されることになったのである。

国・マスコミ・学校の協働で医師の職業的将来性が喧伝されたことに加え、若者の安定志向と高齢化による社会ニーズがマッチし、さらに、次回に記すが、「私立大学の学費値下げ」が始まったことが、医学部人気を押し上げている。

 

医学部入試が過熱する前、団塊ジュニア世代の筆者(1990年前後に高校卒業)が大学受験を迎えたころまでは、まだ私立の医学部などであれば、偏差値50を下回る大学もいくつか存在した。文部省高官の息子でなくても、金さえあれば誰でも入れる医大が、実際にあったのだ。

しかし、いまは状況は一変している。すでに述べたとおり、現在は一番入りやすい私立医学部でも偏差値が62.5。それより下はない。早稲田や慶應の理科系(理学部、工学部等)の偏差値とほぼ同等である。

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コネ入試がまかり通っていた昔と違って、コンプライアンスや情報公開に厳しい現在は、東京医大事件のようなごく少数の場合を除き、学力が無ければ合格は絶対に不可能だ。

大人の受験生も増加している

だがそれでも現代の若者は医師を目指す。ある進学校の理系トップクラスでは、3分の2が医学部を志望しているという。東大の理科系(理科Ⅰ類、Ⅱ類)に合格できる実力があっても、あえて地方の国立大医学部を受験する生徒も多い。

学校や予備校もそれを後押しする。成績がいい生徒は、ただそれだけの理由で、進学実績を稼ぐために医学部進学を勧められる。当然、医学部進学者が多い高校は人気がある。

医学部以外の大学に在籍する、あるいは卒業した者が、医学部をめざす「再受験生」も増えている。私の指導した受験生では、東大などのトップ校の在籍生や卒業生、数学の教員や弁護士や経営コンサルタントまで、実に多種多彩なキャリアの人が医学部を再受験し進学している。

再受験生や多浪生など大人の受験生に寛容と言われる大学の医学部には、10%を超える再受験生が入学し、「再受験コミュニティ」なるものができている大学もあるという。その中には、ボストン・コンサルティング出身の学生や、東大や海外の有名大学の博士課程でPh.D.を取ってから入学した者などもいる。