倍率50倍…!色々あっても医学部が異常な人気を維持し続けるワケ

合格率は7%
原田 広幸 プロフィール

合格率7%の関門

国公立は、前期・後期より各1校ずつしか受験できないため、私立大学より競争倍率は低い。しかし、国公立と私立全体を平均しても、医学部は、合格率7%という超狭き門である。倍率だけを見ると司法試験よりも合格率が低い。これが、医学部入試の現状である。

金持ちの子息がカネを積めば入れる時代は終わったはずであった。というのも、事の次第は、東京医大の不正入試事件で発覚した通りである。

一応、2次試験(面接試験)では、差別的な選別があるということが医学部受験界の常識でもあったから、私たちはそのことを前提に指導を行ってきた。しかし、一目瞭然で点差が明らかになる1次試験=「学科試験」から不正操作が行われているとは思っていなかった。

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これほどの厳しい試験であるのを承知で、親・学校・受験生が一致団結して、真剣勝負に挑んでいるというのに、学科試験の段階から、一律に、恣意的で不正な操作が行われていたというのであるから、関係者はたまらない。

私も医学部受験予備校の経営者・講師として、合格間違いなしと思えるほどのレベルにあった受験生が、試験の十分な手ごたえがあったにもかかわらず不合格になるなど、不可思議な結果をたびたび経験してきた。

 

毎年、同じ大学を、同じような属性・成績の学生が受験し、その結果を直接見てきたから、この感覚はリアルなものである。よもや、とはずっと思い続けてきた。不幸にも、私の不信感が、単なる邪推でなかったことが、今回証明されたわけだ。

これまで、医師になるという目標のために、青春の貴重な時間を費やし、睡眠時間を削って、本人がとてつもない努力をし、家族の金銭的な多大な支援を受けてチャレンジし、それなのに、大学側の点数操作によって夢破れた受験生は、いったい何人に上るのか。これらの受験生のことを思うと、胸が痛む。

ただ、今回の不正が明るみになったことで、これからはもはや、性別や年齢による露骨な差別は行えなくなるだろう。大学も行政もこれに懲りて、なんらかの前向きなアクションを取らざるを得なくなる。

過去の不正は、もしかしたら暴かれないかもしれないが、今後は厳正な入試が実施されるようになるだろう。このような私の期待が正しければ、多数の受験生の大きな犠牲の上ではあるが、これを幸いと考えるしかない。

医学部ではない学部を中退した学生や社会人など、まさに退路を断って医学部に挑んだ受験生を中心に受験指導をしてきた私としては、この差別が明るみになったことを、プラスに考えたいと思う。

金儲け、というわけでもない

さて、医師は、昔からよい職業、目指すべき職業ではあった。報酬もよく、ステータスもあり、安定している。何より、「モテそう」である。実際、婚活市場でも医師は特別な待遇でもてはやされる。医師専門の結婚紹介所も存在するくらいである。

AIの進化によって多くの職業が失われると言われているが、コラム「人工知能に奪われる仕事リストのなかに、医療職が入らないワケ」<https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57014>で考察したように、当面、医師の仕事がなくなることはないだろう。将来の安心感は大きい。

医師になれば、すくなとも上場会社の幹部並みの良い生活ができる。卒後研修期間は薄給だが、高時給のバイトもできる。学資ローンがあっても、数年働けば、すぐに返すことができる。一般の学部とは大違いなのだ。

たしかに、医師は極めて忙しい。とくに、若い勤務医となれば、診療科にもよるが、睡眠時間も削らねばならず、プライベートも制限される。

しかし、社会への貢献心は満たされる。自分の能力が他者に還元されるのが実感できる。AI時代になっても、この核心は変わらない。こういった点も、医師志望の若者にとっては重要なポイントであり、単なる金儲けで医師を目指す若者はほとんど見たことはない。

こんなわけで、少なくとも2018年度入試までは、猫も杓子も医学部という状況である。

では、そもそも、なぜ一律での不当な差別的な入試を行わなければならないほど、医学部は人気になっていたのだろうか。時代の変化はあっても、若者の意識だけで、医学部人気は説明できない。