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世界に例を見ない巨大地溝「フォッサマグナ」の謎に総力戦で挑む!

大好評『フォッサマグナ』前書き公開!
絶好調! ブルーバックスの人気企画「山」「海」「川」「石」でおなじみの藤岡換太郎さんの待望の新刊『フォッサマグナ』が発売後ただちに重版決定しました。
日本列島を東西に分断する「怪物地形」の正体とは? 少しでも多くの方に本書の魅力の一端なりともお伝えするため、「前書き」部分を特別全文公開いたします。

「何だか知ってる?」への答え

私が初めてフォッサマグナへ行ったのは高校生の頃でした。

私が通っていた京都の鴨沂(おうき)高校では、学校の行事としてスキー合宿があり、滋賀県の箱館山や長野県の小谷(おたり)まで滑りに出かけていました。小谷へは、大糸線という電車で行ったのを覚えています。

蕨平(わらびだいら)という村の民宿で2~3日をすごして、みなでスキーを楽しみました。でもそのときは、自分たちが乗ってきた電車や、滑っている谷、泊まっている村が、日本列島を東西に真っ二つにしている大地溝の中にあるということなど、思いもよりませんでした。

ああ、あそこがフォッサマグナだったのかと気づいたのは、大学の3年生になって地質学を専攻するようになってからでした。将来は「地質屋」になろうとしていた人間でさえ、そうだったのです。

「フォッサマグナって何だか知ってる?」

この本を書くにあたって、試しにいろんな人たちに聞いてみると、しばしば、以下のような答えが返ってきました。

「さあ? 人の名前? 何をした人?」
「それって、どこの地名だっけ?」

なかには「フォッサマグマ」や「ホッサマグナ」だと思い込んでいる人までいて、かなりの迷答・珍答を楽しむことができました。

とても重要なのに敬遠されて

東西に長く延びた日本列島は、自然や文化などいろいろな面で、東と西では大きく様相が異なっています。

それは気候風土のみならず、人の気質、言葉づかい、食べものの好みから、電力周波数、石油ポリタンクの色、エスカレーターでは左右どちらに乗るかにまで及んでいるともいわれています。

そして、東西の境界線がフォッサマグナ地域あたりにあるらしいということは、知っている人には知られています。

いまあげた例には、本当にフォッサマグナが境界線なのか眉唾なものもありますが、フォッサマグナが日本列島を東西に分ける巨大構造であることは、間違いのない事実です。

糸魚川―静岡構造線糸魚川―静岡構造線。ここで日本列島の東西が分かれている
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大学で地質学を専攻するようになった私は、フォッサマグナを発見したのが日本人ではなく、ドイツのナウマンというずいぶん若い学者であるらしいことを知りました。そして、フォッサマグナは日本列島がなぜ現在のような姿になったのかを知るための鍵を握っていることを習いました。

たとえ日本人の多くは知らなくても、発見したのが日本人ではなくとも、フォッサマグナは日本人にとってとても重要なものです。フォッサマグナの理解なくして、日本列島の成り立ちはわからないのです。

しかし、それほど重要な存在でありながら、どういうわけか研究者の多くは、フォッサマグナを避けて通っているように思われます。