「日本人が知らない日本人の善行」は、こんなにあります。

第23回ゲスト:黒鉄ヒロシさん(前編)
大人の遊びを知り尽くした伝説の編集者・島地勝彦が、ゲストとともに“男の遊び”について語り合う「遊戯三昧」。最終回となる今回は、ご存じ漫画家の黒鉄ヒロシさんをお招きし、連想飛躍の限りを尽くして「日本人の心」について語っていただいた――。バックナンバーはコチラから

端緒に就き、掉尾を飾る特別なゲスト

島地: おい、日野! 今回が最終回だなんて、何も聞いてないぞ!

日野: あ、いや、その、何度も話そうと思ったんですが、島地さんの話はあちこち飛んでいくから、ついていくのに精いっぱいで……。

島地: 大人の事情というやつか。ま、仕方ないな。まだまだ会いたい人は山ほどいたけど、最後にふさわしいゲストといえば、やはりこのお方しかいないな。

日野: 黒鉄さんは記念すべき第1回のゲストでもありましたね。

黒鉄: またお招きいただきありがとうございます。端緒に就き、掉尾を飾らせていただくとは、これまた光栄の至り。最終回ということですが、島地さん、そんなことでアツくなっちゃいけません。スポーツの勝ち負けに一喜一憂する労働者階級のごとき、ですぞ。

その前に、まずは一服失礼いたします。シマジさんとの対談はいつも酒とタバコがセットですから、リラックスできて実にいいですな。

日野: ここは愛煙家のシマジさんが懇意にするバーです。世知辛いことはいいません。存分にどうぞ。しかし、例の受動喫煙防止条例が施行されたらお二人は大変ですね。

ところで、黒鉄さんとスポーツはなかなか結び付かないですが、ご覧になるんですか?

島地: きっと、常人とは違う黒鉄スポーツ観があるんじゃないですかね。

黒鉄: そもそもの話ですが、多くのスポーツは貴族が「汗を流すため」に始めたものでしょう。外で働く労働者を見て、「彼らはいったい何をしているのか?」と興味を持ち、同じように汗をかく手段としてスポーツが生まれた。テニスなんかはその典型です。

為政者が労働者のガス抜きに使うもの

島地: 球技でも、サッカーと似ているようで、実は似て非なるものがラグビー。サッカーは為政者が庶民のガス抜きに利用した側面がありますが、ラグビーは「紳士のスポーツ」と呼ばれています。

日野: 見た目はラグビーのほうが荒っぽい印象ですけど。

黒鉄: 日野さんは第1回目の頃からあまり進歩してないようですな。まさに木を見て森を見ずのタイプ。

島地: おっしゃる通り。このシマジから何も学ばないのが不思議でなりません。

日野: 基本パシリで、何も教えてもらってないですけど……。

島地: あふれ出す知性は教わるものじゃなく、黙って吸収して咀嚼するもの。おれも若い頃は柴田錬三郎先生や今東光大僧正から……

日野: その話は長くなるのでまたにしましょう。サッカーとラクビーの違いには興味あります。

黒鉄: そもそも、ルールに対しての向き合い方がぜんぜん違うでしょう。サッカーのルールは「いくらでもごまかしていいもの」で、たいしたファールも受けていないのに大げさに痛がってみたり、だらだら時間稼ぎしてみたり。審判を騙すような行為がまかり通っている。まったく紳士的じゃありません。

ラグビーのルールは「守らなかったら罰を与えられるもの」ではなく、「ゲームを進めるうえで大切なものとして共有し、自ら守るもの」です。サッカーよりはるかに激しく体をぶつけ合うのに、遵法精神をもって最後まで正々堂々と競い合う文化があります。